皆さんはこんな痛みで悩んでいませんか?
- 動くと肩甲骨と肩甲骨の間がピリピリと痛む
- 咳をしたり深呼吸すると脇腹が痛む
- 痛む場所がその時によって変わる
これらは一般的に肋間神経痛と呼ばれる症状です。
ですが、背中に神経痛のような痛みを起こすのは肋間神経痛だけではありません。
肋間神経痛が原因だと思い、良かれとやっていることが実は逆効果になっていたり、全然的外れでいつまでも痛みが良くならないということもあります。
今回は背中の神経痛の原因とその対処法について解説します。
背中に神経痛が出る時に考えられる疾患

背中に神経痛が出る場合、おもに2つの原因が考えられます。
- 肋間神経痛
- 胸郭出口症候群
どちらも背中に神経痛のような症状を起こすことがありますが、おもに痛くなる部位が違います。
肋間神経痛は脇腹の痛みがメインで、胸郭出口症候群は肩甲骨近くの痛みがメインです。
両者は症状が似ているので間違いやすいですが、何が違うのかを解説します。
肋間神経痛
肋間神経が何らかの原因で障害され、肋間神経が支配する部位に痛みが出現することを指します。
肋間神経が支配する部位は幅広く、腕の胸から骨盤、背中から腰、腕の内側にまで及びます。
なので、痛みとしては幅広く起こる可能性はあります。
ですが、基本的には肋骨に沿った痛みで、多いのは脇腹、その他には胸やお腹に痛みを感じます。
特徴としては以下のようなものが挙げられます。
- 左右同時に痛みが出ることはまれで、ほとんどは片側のみ
- 刺すような痛み
- 灼くような痛み
- 呼吸や咳、体を動かすと痛む
胸郭出口症候群との違いとしては、脇腹の痛みが多いということと、原因が複数あって特定するのが難しいということです。
胸郭出口症候群
胸郭出口症候群は、つり革につかまる時や、物干しの時のように腕を挙げる動作で上肢のしびれや肩や腕、肩甲骨周囲の痛みが生じます。
参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
痛みやしびれを起こす原因となる神経や血管は、首の外側から鎖骨の下を通って肩の外側へ向かいます。
この肩へ向かうまでの間で、神経や血管が圧迫されたり、周りの筋肉や骨で摩擦を受けたりすることがあります。
それによって起こる肩や腕、肩甲骨周りの痛みを胸郭出口症候群と呼んでいます。
症状としては、前腕尺側と手の小指側に沿ってうずくような、ときには刺すような痛みと、しびれ感、ビリビリ感などの感覚障害に加え、手の握力低下と細かい動作がしにくいなどの運動麻痺が挙げられます。
参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
神経や血管が原因となるわけですが、首から出た神経や血管が圧迫を受けるポイントはおもに以下の3つです。
- 前斜角筋と中斜角筋の間
- 鎖骨と肋骨の間
- 小胸筋と肋骨の間
斜角筋は首を曲げたり横へ倒したりする筋肉です。
小胸筋は肩を前下側へ下げる筋肉です。
それぞれ筋肉と骨の間で神経や血管が圧迫されてしまう可能性があり、それによって肩や腕、肩甲骨周りに痛みが出てしまうということ。
肋間神経痛との違いとしては、肩甲骨周りや肩の痛みが多いということと、神経が圧迫される場所は大体決まっているので、原因を絞り込みやすいということです。
胸郭出口症候群で背中に神経痛があるケース

つり革につかまったり、物干しなど腕を挙げた時に症状が出るとされていますが、誰もが腕を挙げただけで症状が出現するわけではありません。
では、何故同じ動きをしても胸郭出口症候群で背中に痛みが出る人とそうでない人がいるのか。
その原因と対処法を解説します。
胸郭出口症候群の原因
胸郭出口症候群で背中に神経痛が起こる場合、おもに以下の2つが原因となります。
- なで肩や不良姿勢
- 筋肉などが硬い
胸郭出口症候群の原因として、牽引型と圧迫型の2つに分けられます。
なで肩は牽引型、筋肉の硬さは圧迫型に当たります。
それぞれの違いについても解説していきます。
なで肩や不良姿勢
なで肩は牽引型の胸郭出口症候群に当たります。
実際になで肩の女性や、重い物を持ち運ぶ労働者で、上述したような症状があれば、胸郭出口症候群の可能性があるとされています。
参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
なで肩は肩の高さが通常よりも下がった状態で、首から肩にかけて伸びる神経と血管が伸ばされやすくなっています。
肩を上に持ち上げた状態で首を反対側へ倒すのと、肩を下に下げた状態で首を反対側へ倒すのでは、後者の方が首から肩にかけて突っ張る感じが分かるはずです。
また、なで肩では鎖骨や小胸筋も位置が下がるので、その分神経や血管が圧迫されやすいです。
つまり、なで肩によって神経と血管が伸ばされるのと、鎖骨や小胸筋によって圧迫されやすいことが、なで肩や不良姿勢で胸郭出口症候群が起こりやすい原因です。
筋肉などが硬い
牽引型のなで肩とは反対に、いかり肩の男性に多いとされ、こちらは圧迫型に当たります。
いかり肩では、肩の高さが通常より上に持ち上がった状態で、首や肩の筋肉が縮まって厚みが増します。
二の腕の力こぶをイメージしてもらうと分かりやすいですが、筋肉は力を入れるとボコッと膨らむように厚みが増します。
神経の通り道にある筋肉の厚みが増すということは、神経の通り道が狭くなり、圧迫されやすいということになります。
対処法
対処方法としては、以下の3つあります。
- ストレッチ、マッサージ
- 姿勢改善
- 手術
それぞれについて解説します。
ストレッチ、マッサージ
なで肩の牽引型の方は胸の小胸筋、いかり肩の圧迫型の方は首の斜角筋をストレッチ、マッサージしましょう。
以下に小胸筋と斜角筋のストレッチ方法を紹介します。
- 肘を90度に曲げて肩の高さまで挙げる
- 肘と手のひらを壁につける
- 肘と手のひらを壁につけたまま、体を反対側へひねり肩を前に出すようにする
- そのまま10~20秒キープする
- 首をどちらかに傾ける
- 首を傾けたまま後ろへ反らす
- 首を傾けた方向と反対側の肩を下へ下げる
- そのまま10~20秒キープする
姿勢改善
生まれつきのなで肩やいかり肩を改善するのは難しいですが、そうでないものは改善できます。
なで肩の方は、背中が丸まって猫背のような姿勢になっていることが多いので、背筋を伸ばすように意識しましょう。
この時、注意したいのが、後ろの反りかえるのではなく、頭のてっぺんから上に引っ張られるように背筋を上に伸ばすことが大事です。
いかり肩の方は、無意識に肩に力が入っていて、肩をすくめたような姿勢になっていることが多いです。
気づいたら肩の力を抜くように意識するのと、生活の中で肩の力を抜いて休憩する時間を作ることがポイントです。
手術
経過を見ていても症状が変わらない、症状が強く生活に支障が出ている場合に手術が選択される場合があります。
手術方法としては神経が圧迫されている場所によって異なり、以下の3つの場所ごとに手術方法が異なります。
- 前斜角筋と中斜角筋の間
- 鎖骨と肋骨の間
- 小胸筋と肋骨の間
1の場合は、前斜角筋の一部を切除、同時に第1肋骨も切除する場合が多いです。
2の場合は、第1肋骨が切除されます。
3の場合は、小胸筋の一部が切除されます。
どれも共通するのは、圧迫している筋肉や骨を取り除くことで、圧迫から開放するというということです。
肋間神経痛で背中に神経痛があるケース

肋間神経痛は痛みが出現する可能性のある範囲がとても広く、原因を絞るのは難しい部分もあります。
ここでは、肋間神経痛による背中の痛みに絞って、なぜ背中が痛くなるのかを解説します。
肋間神経痛の原因
肋間神経痛の原因としては、以下の3つあります。
- 椎間板ヘルニアや変形性脊椎症
- 帯状疱疹
- 筋肉など周辺組織の問題
それぞれについて解説していきます。
椎間板ヘルニアや変形性脊椎症
椎間板ヘルニアとは、背骨と背骨の間にあるクッションのような役割を持つ椎間板が後ろへ押し出されることで、神経を刺激し痛みやしびれを起こすことを言います。
変形性脊椎症とは、加齢によって背骨の一部が変形することで、痛みを起こすことを言います。肋間神経は背骨のすぐ後ろから各肋骨へ向かい、肋骨に沿って伸びています。
肋間神経は押し出された椎間板や変形した背骨によって、圧迫されたりこすれて摩擦が起きたり、刺激されやすい位置にあるのです。
なので、それらによって肋間神経が刺激されることで、背中や脇腹に痛みを起こすことが考えられます。
帯状疱疹
帯状疱疹は、水ぶくれや赤い発疹が帯状に起こることを言います。
子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが神経の近くに潜んでおり、疲れやストレスなどで免疫力が低下している時に活性化して、皮膚に発疹を引き起こします。
これによって、肋間神経が刺激されると、肋骨に沿った痛みを引き起こします。
肋間神経は広い範囲で広がっているので、それだけに帯状疱疹の影響を受けやすい神経であると言えるでしょう。
筋肉など周辺組織の問題
肋間神経は背骨の近くからいくつもの筋肉を貫いて体表まで出てきます。
なので、貫いている筋肉が緊張して硬くなると、肋間神経を圧迫し痛みを起こす可能性があります。
特に腰や背中の筋肉は、姿勢が悪かったりすると簡単に硬くなってしまいます。
対処法
対処方法としては、以下の4つがあります。
- 内服治療
- 神経ブロック
- 原因に対する治療
- ストレッチ
それぞれ解説します。
内服治療
基本的には、炎症を抑える抗炎症薬や解熱薬を内服します。
これは原因がはっきりしないものであったり、炎症していると判断された時に処方されます。
神経ブロック
神経ブロックとは、神経の周りに麻酔をかけることで神経の興奮を抑え、痛みを和らげる方法です。
神経の興奮が抑えられることで、神経から脳へ伝わる痛みの信号が弱くなるので、痛みが和らいだと感じます。
原因に対する治療
原因がはっきりしていれば、肋間神経痛に対する治療というよりは、その原因に対する治療を優先します。
たとえば、帯状疱疹による肋間神経痛であれば、ウイルスが原因なので、ウイルスに対する抗ウイルス薬が適応になります。
椎間板ヘルニアであれば、リハビリによって背骨に負担がかからないように体幹の筋力を強化したり、動作指導などを行います。
重症の場合はヘルニアを取り除く手術も検討されます。
ストレッチ
背骨周りの筋肉が緊張して硬くなっていることが原因であれば、それらをストレッチすることで肋間神経痛を和らげることが期待できます。
ここでは肩から背中にかけて広がる広背筋という大きな筋肉のストレッチの方法を紹介します。
- 四つん這いになる
- 片手を反対側の手と膝の間を通すように伸ばす
- 脇を床につけるように手を伸ばしていく
- 痛気持ち良いところで10〜20秒キープする
まとめ
背中に神経痛を起こす可能性のあるのは、肋間神経痛と胸郭出口症候群の2つです。
ですが、両者は原因が異なるため、同じような痛みであっても対策を変えなくてはいけません。
なので、もしあなたが背中に神経痛を感じているのなら、肋間神経痛なのか胸郭出口症候群なのかを判断しないといけません。
本記事では、両者の違いを書きましたので、参考にしてご自身がどちらに当てはまるのか考えてみてください。
そして、症状が強く生活を送ることもままならない場合は、すぐに整形外科を受診して判断を仰いでください。