「ベンチプレスで首に違和感がある」
「ベンチプレスを始めてから首が痛むようになった」
このようなお悩みはありませんか?
もしくはトレーニングを始めて、
「最近なんだか知らないけど首が痛い」
と感じている場合は、ベンチプレスも一つの原因かもしれません。
実はこの「ベンチプレスと首の痛み」、すぐに病院に行くべき危険なケースであることもあります。
放っておくとトレーニングを続けられないどころか、日常生活に支障が出てしまう可能性もあります。
痛みには必ず原因があり、この原因を見極めて危険なケースがどうかを判断することは何よりも重要です。
本記事では、そんな痛みの原因の見分け方から正しいフォーム・セルフケアの方法までわかりやすく解説していきます。
首の痛みに悩んでいる・不安を抱えている方は今すぐ確認していきましょう。
※もし他の部位が痛い場合にはこちらの記事もご覧ください。
目次
ベンチプレスで首が痛い時に考えらえること
まずベンチプレスをしていて首に痛みが出てしまう場合に考えられる原因について解説します。
主に以下の5つが首の痛みの原因です。
- 筋肉が硬い
- 背骨や股関節が硬い
- 首に負担のかかるフォームとなっている
- 負荷量が合っていない
- オーバーワークとなっている
その理由を解説します!
筋肉が硬い
首は解剖学的に前方へ湾曲した構造(前弯)を呈しています。
頚椎を横から見ると、頭部は前方へ、お尻の部分は後方に湾曲したS字カーブを描いています。脊椎のS字カーブがバランスをとっているため、人間は直立して2足歩行ができるのです。なんらかの原因でこのS字カーブが崩れると首や肩、背中への負担が増し、痛みの原因となることがあります。
■参考:アリナミン
上記のように本来の正しい姿勢であれば首は前方にカーブした構造になっています。
一つ一つの首の骨(頚椎)が重なってカーブを描き、そのカーブの周りに首を前後に動かしたり左右に傾けたり、左右に振り返ったりと、多様な動きを可能にする筋肉がついています。
しかし、不良姿勢や間違ったフォームなどで頚椎の前弯が崩れると「ストレートネック」という状態になります。
ストレートネックになると以下の首の周りの筋肉が過緊張になったり硬くなったりして痛みにつながります。
- 胸鎖乳突筋
- 僧帽筋
- 肩甲挙筋
など
姿勢不良による筋肉の硬さが原因なので、対策としてはストレッチがおすすめです。
詳しくはこの後の「ストレッチ」の項で解説したいと思います。
背骨や股関節が硬い
また、首以外にも背骨や股関節の硬さも影響してきます。
首から骨盤まで背骨は脊椎と言われる薄い円柱型の骨が積み重なった作りになっています。
人間はその脊椎を筋肉や靭帯で支えて起立姿勢を保ったり二足歩行をしています。
首から骨盤まで、さまざまな筋肉や靭帯で支えているため、背骨や股関節が硬いとその影響が首まで及ぶこともあります。
歩行に限らず、ベンチプレス中も肩や胸だけでバーベルを持ち上げているように見えますが、その肩や胸を背骨や足などを含む全身で支えています。
補助的に使われるはずの股関節や背骨が硬いために良い姿勢が作れない場合、胸や肩に負担が増えて首周りの筋肉にも影響があります。
また、全身の筋肉は筋膜という膜で覆われており、全身に相互作用を及ぼします。
一見、首と背骨や股関節は関係のないように思えますが、実は原因が隠れていることもあります。
負荷量が合っていない
ベンチプレスは負荷量が数字となって現れるので、より重いバーベルを持ち上げられるようになると嬉しくなりますよね。
そこで、どんどん重くして達成感を味わいたくなってしまうこともあるかもしれません。
しかし、自分の能力に合わない負荷量でのトレーニングを続けていると痛みを誘発してしまいます。
筋トレの負荷量の基本は小さい負荷から開始して、徐々に強度を上げていくことです。
いきなり大きな負荷量のものを持ち上げようとすると筋肉や腱の損傷につながることもありますので注意しましょう。


適切な負荷量の目安は後半の”負荷量を見直す”の項を参照してください。
オーバーワークとなっている
十分な休息を取らずにトレーニングをやりすぎてしまうことをオーバーワークと言います。
筋トレは筋肉に負荷をかけることで筋繊維に軽微な損傷を与え、それを回復させることで筋肉増強や筋肥大の効果を狙います。
しかし、その回復が追いつかない状態になってしまうとオーバーワークになります。
オーバーワークの状態が続くと慢性的な疲労やだるさ、集中力の低下が起こります。
また、傷ついた筋繊維が修復される前に再度トレーニングするので、常に筋繊維は傷ついた状態になります。
そうすると筋肉痛が長引いて痛みが続きます。
ベンチプレスでは首の筋肉を直接鍛える運動ではありません。
しかし、メインで鍛える胸や肩の筋肉がオーバーワークになることで疲労が溜まり動きにくくなってしまい、結果的に首によけいな力が入ってしまうなどの二次的な痛みが生じる可能性があります。
トレーニングの頻度や日常生活の疲労が溜まっていないか振り返ってみましょう。
筋繊維の損傷の回復には2〜3日を要すると言われていますので、二日続けて同じところを鍛えるのではなく、全身まんべんなく鍛えましょう。
また、トレーニングの休息日を設けて、その日はストレッチやウォーキングなどの軽い運動にとどめるなどの対策もおすすめです。
ベンチプレスで首が痛いよくある2つのケース
ベンチプレスで首を痛めるときはどのような時でしょうか。
今回はバーベルを上げる時と降ろす時の2つのケースで考えられる原因と見直すポイントを解説します。
バーベルを持ち上げるときに痛む
バーベルを持ち上げる時に痛む場合は、以下の2点に注意してみましょう。
- 顎を胸に近づけすぎていないか
- バーベルの動きを目で追いすぎていないか
顎を胸に極端に近づけすぎると首の前弯が消失してストレートネックの状態になります。
そのまま胸に力を入れてバーベルを持ち上げると首にとって悪い姿勢のまま踏ん張ることになり痛みが生じます。
また、バーベルをしっかりと目で追ってしまうと顎を引く動作につながり、こちらもストレートネックを誘発します。
バーベルに焦点を合わせるのではなく天井を見つめたまま、なんとなく視界の中でバーベルの動きを確認しましょう。
バーベルを降ろす時に痛む
バーベルを降ろすときにも注意が必要です。
主にトレーニングでは、力を入れながら息を吐いて、力を緩めるときに息を吸うという呼吸法がとりれられています。
この理由は、しっかりと息を吸って体幹部を緊張させることで力が効率良く発揮されるからです。
そのためには腹式呼吸を行う必要がありますが、息を吸うときにいっぱい空気を取り込もうとして首に余計な力が入る場合があります。
ベンチプレスでは、バーベルを持ち上げる時に息を吐き、下ろしながら息を吸います。
なのでバーベルを下ろす際に首が痛む場合は息を吸う際に無理にたくさん吸おうとして首の緊張が高まっている可能性があります。
ベンチプレスで首が痛い危険なケース
ここまでは姿勢や筋肉、生活習慣などが理由で起こる痛みについて説明しました。
しかし、危険な首の痛みもあります。
危険な痛みの特徴は下記の2点です。
- 激しい頭痛を伴う
- 吐き気や嘔吐がある
- 意識が朦朧とする
これらはクモ膜下出血などの脳血管疾患の症状です。
クモ膜下出血を発症すると約50%が死にいたると言われています。
ベンチプレスなどの呼吸を止めて一気に負荷をかけるウェイトトレーニングでは、交感神経系の一部が過剰反応して頭痛が起こるケースがあります。
これを「一次性運動時頭痛」といい、その多くは数週間から1ヶ月で良くなると言われています。
しかし、その一次性運動時頭痛の影に隠れて上記のクモ膜下出血などの脳血管に重大なダメージを与える危険な病気が潜んでいることがあるので早急に受診しましょう。
もし対応が遅れてしまうと命に関わったり、脳にダメージが残り麻痺などの後遺症につながる可能性があります!
また、無理な姿勢でバーベルを持ち上げてしまってぶつけた外傷の場合は、応急処置としてアイシングをして痛みが引くまで安静にしましょう。
それでも痛みが強い、痛みがひかないなどの症状が続く場合は受診しましょう。
他にも、内科や整形外科的な疾患が隠れている可能性があるので以下に当てはまる場合は受診しましょう。
- 強い痛みが長引く
- 熱を伴う
- 上肢の痺れがある
発熱を伴う痛みの場合は細菌による感染症の可能性があるので受診して検査をしましょう。
また、痺れが伴う首の痛みの場合は神経を圧迫している可能性があり、頸椎椎間板ヘルニアの可能性があります。
強い痛みが長引いている場合もベンチプレス以外の原因もあり得るので医師に相談しましょう。
ベンチプレスで首が痛い時の4つの対処法
では、実際にベンチプレスが原因で痛みがある場合の対処法について解説します。
- ストレッチ
- 筋トレ
- フォームを見直す
- 負荷量を見直す
主にこの4つに取り組んで改善するか確認しましょう。
ストレッチ
ベンチプレスで首の位置が悪くストレートネックになってしまっている場合は、以下の首の周りの筋肉が硬くなっている可能性があります。
- 胸鎖乳突筋
- 僧帽筋
- 肩甲挙筋
など
これらの筋肉のストレッチ方法を解説していきます。
<僧帽筋を主に伸ばします>
- 真っ直ぐに前を向いてそのまま真横に頭を倒す
- 頭の重みで首の横を伸ばす
- さらに伸ばしたい場合は傾けた方の手を耳の上に当てて軽く倒すように押す
- 反対側も同様に行う
<胸鎖乳突筋を主に伸ばします>
- 真正面を見るように前を向く
- そのまま少し左を向くように顔を回す
- 左手を胸に当てる
- 同じ方向を向いたまま首を後ろに倒す
- 反対側も同様に行う
<肩甲挙筋を主に伸ばします>
- 真正面を見るように前を向く
- そのまま少し左を向くように顔を回す
- その向きのまま首を前に倒す
- さらに伸ばしたい場合は左手を頭の後ろに添えて優しく押す
- 反対側も同様に行う
この3つのストレッチを行うことで首の痛みを誘発する筋肉を満遍なく伸ばすことができます。
運動前や寒い時、寝起きなどに無理にストレッチをすると逆に痛めてしまう可能性があります。
ストレッチを行うタイミングとしては、運動後や入浴後など体が温まっている時にしましょう。
筋トレ
ベンチプレスでの首の痛みを予防するためには、ストレートネックにならないように首のインナーマッスルを鍛える必要があります。
これはベンチプレス中に限らずスマホやパソコンを長時間見る現代の生活においてストレートネックになりやすいので、積極的にトレーニングしましょう。
- 平らなところに仰向けに寝る
- 真っ直ぐと天井を見て首が横を向かないように気をつける
- そのまま二重顎をつくるように顎を胸に引き寄せる
- 5秒キープ
- これを5〜10セット繰り返す
この動きで首のインナーマッスルを鍛えることができるので、首の前弯を維持することができます。
ストレッチと筋トレの両方を行なって首の痛みやストレートネックを予防しましょう。
フォームを見直す
ベンチプレスの正しいフォームについてはこの後に詳しく解説しますが、簡単にチェックできる以下のポイントを確認しましょう。
- 後頭部・背中・足がしっかりとベンチや床についているか
- 降ろす時に肩甲骨を寄せているか
- バーベルを下ろす位置は乳頭の上にきているか
重量のあるバーベルを持ち上げるため、最初にセッティングした時は後頭部や背中、足がしっかりとついていたのに、「力を入れたら浮いてしまった」なんてことがないように気をつけましょう。
バーベルを下ろすときは肩甲骨を寄せるようにして胸を張りましょう。
そうすることで肩の怪我を防ぎます。
バーベルを下ろす目安は乳頭の位置です。ずれてしまうと手首や肘などを痛めてしまうので注意しましょう。
さらに細かいフォームのポイントは”ベンチプレスの正しいフォーム”の項をご覧ください。
負荷量を見直す
自分に合った負荷量の目安を解説しますので参考にしてみてください。
RMを用いた目安
RMとはrepetition maximum(反復可能最大重量)のことです。
簡単にいうと、1RMはその重さを一回持ち上げるのが限界という考え方をします。
10RMなら10回上げ下げできるということです。
- 筋力を向上させたい:3~7RM
- 筋肥大させたい:8~12RM
- 筋持久力を上げたい:13〜20RM
目的に応じた負荷量で無理なく練習をしていきましょう。
体重を基準とした目安
RMを用いずに競技レベルと体重から計算して負荷量を設定するやり方もあります。
- 初心者(筋トレ経験なし):体重の約0.5~0.7倍
- 初級者(筋トレ1ヶ月程度):体重の約0.7~1.2倍
- 中級者(筋トレ歴半年程度):体重の約1.2~1.5倍
- 上級者(筋トレ歴2年以上):体重の約1.5~1.8倍
- アスリート(筋トレ歴5年以上):それ以上
体重で計算するので誰でも簡単に割り出せますね。
これらはあくまでも目安なので、実際に行なってみて合わないようであれば調整しましょう。
ベンチプレスの正いフォーム
ベンチプレスの正しいフォームについて解説します。
- バーベルが目の位置にくるように仰向けにベンチに体をセットする
- 肩幅の1.5倍の広さでバーベルを握る
- 足は開いて膝が90度になるように地面にしっかりと踵をつける
- バーベルをラックから外して胸の位置に持ってくる
- お尻をうかさないように注意して足で踏ん張る
- 息を吐きながらバーベルを持ち上げる
バーベルの握る位置や、スタートの姿勢が崩れてしまうと首だけでなく肩や肘、手首などさまざまな部位の怪我につながるので最初の姿勢はしっかりと正しい位置を心がけましょう。
バーベルを持ち上げる際は後頭部と背中、お尻、足で踏ん張りますので力を入れたら首が持ち上がって後頭部が浮いてしまわないようにして首に無理な力がかからないようにします。
バーベルを持ち上げる際に息を吐くのですが、その前に息を吸うときは肩や首の力は抜いて余計な力が入らないように気をつけましょう。
- 肩甲骨同士を寄せながらバーベルをゆっくりと下す
- 降ろす時は息を吸いながら踏ん張る
- 降ろす位置は乳頭の上を目安にする
バーベルを上げるときだけでなく下げる時もフォームを意識することで筋力増強や筋肥大の効果を増やすことができます。
また、下ろす時に気を抜いてしまって肩甲骨を寄せるのを忘れたり、下ろす位置がずれてしまうと肩や肘の怪我にもつながります。
持ち上げて下ろす一連の動作を丁寧に行いましょう!
首の痛みを今すぐどうにかしたい人へ
今回の記事では、ベンチプレスによる首の痛みが出た場合の原因と対処法について解説しました。
危険な痛みである場合は早急に受診して医師に診てもらいましょう。
それ以外の環境や自分の体に起因する原因による痛みであれば、ぜひこの記事を参考に改善策を試してみてください。
それでも…
「自分自身でのストレッチやマッサージなどのセルフケアで改善しなかった」
「痛くて辛いから早くどうにかしてほしい」
そのような場合は、理学療法士が全身のコンディションチェックから、筋膜リリースという手法で痛みの原因を探りながらケアします。
そのようにお悩みの方はぜひ理学ボディにご相談ください!
痛みに対するアプローチのスペシャリストが対応します!
まとめ
この記事ではベンチプレスで首が痛くなる原因と対処法について解説しました。
しかし、トレーニングに関係なく現代社会では日常生活でも首に不調が出るケースが多くなっています。
それはストレートネックが原因です。
この記事で取り上げたストレッチや筋トレを参考に良い姿勢で首の痛みがなく過ごせたら良いですね!
無理のない負荷設定でトレーニングを進めましょう!