子供が股関節の痛みを訴えていたら不安な気持ちになりますよね。
子供の体はまだまだ成長段階で、その時期に激しい動きを伴うようなスポーツをすると、体が適応できず、痛みが出てくることもあります。
適切に対処しないと、痛みが長引いて後々まで影響が出る可能性も考えられます。
スポーツしたくてもできないことになったら、人生で一度しかない貴重な時間を棒に振ってしまうかもしれず、もったいないですよね。
そこで、今回は股関節を痛める子供が多いスポーツ、股関節が痛い時に考えられることとその対策を解説します。
股関節を痛める子供が多いスポーツ
股関節を痛める子供が多いスポーツとしては、主に以下の5つが挙げられます。
- サッカー
- バレエ
- テニス、バドミントン
- バレーボール、バスケットボール
- 陸上
それぞれどのような動きが股関節を痛める原因になるのか解説します。
サッカー
サッカーではシュートする際に股関節の前側を痛める場合が多いです。
シュートする時の蹴る側の股関節、軸足の股関節のどちらも痛める可能性があります。
股関節は指や膝などの関節と異なり、球体の関節です。
そのため、様々な方向へ動くことができる可動性が大きい関節ですが、それだけに動きが悪くなると負担が大きくなってしまいます。
特にサッカーでは、インサイドキックやアウトサイドキックなど複数のキックの種類があり、股関節の可動域が小さいと上手くキックを使い分けることができません。
また、股関節だけでなく、背骨や腕の可動性が小さいとシュートの瞬間に足だけに頼ったシュートになってしまい、蹴る側の足にも軸足にも負担が大きくなってしまいます。
バレエ
バレエでは、パッセやバットマンで股関節の前側や外側の付け根を、アラベスクで股関節の後ろ側を痛める場合が多いです。
多くは股関節を外側へ開く外旋という動きが悪く、股関節が内側に入ってしまうことが原因です。
足を前側や外側へ持ち上げる際には、股関節は外旋を伴うのですが、外旋の動きが悪いと股関節が上手くはまり込みません。
その結果、骨と骨がぶつかるインピンジメントと呼ばれる現象が起こったり、筋肉が過剰に緊張して詰まったような感覚となり、痛みに繋がることがあります。
テニス、バドミントン
テニスやバドミントンでは、ラケットでボールを打つ瞬間に股関節の前側を痛める場合が多いです。
ボールを打つ際には、股関節を軸足に体を回転させてラケットを振ります。
腰でひねっていると勘違いされる方もいますが、腰はひねるような動きには適していないため、股関節を軸にしてひねっています。
特にテニスなどのラケット競技では、体を少し前にかがめて打つことが多いです。
この時、股関節は曲がったまま内側あるいは外側へひねる動きが加わります。
股関節は本来、曲げると上手く関節がはまり込んで安定しますが、股関節の動きが悪いと上手くはまり込まず、インピンジメントを起こすことがあります。
その状態でさらにひねる動きが加わると、骨を変形させたり関節の周りを傷つけてしまうこともあり、痛みに繋がります。
バレーボールやバスケットボール
バレーボールやバスケットボールでは、ジャンプや着地、前後左右への急激な動きが多く、股関節の前側や内側を痛めることが多いです。
バレーボールのスパイクやサーブ、バスケットボールのシュートやリバンウンドでジャンプと着地を繰り返すため、股関節の前側の筋肉が伸び縮みを繰り返します。
また、中腰のような少し体をかがめた姿勢でいることが多く、股関節の前側の筋肉は縮こまっていることが多いです。
その結果、前側の筋肉は硬くなりやすく、硬くなった筋肉が急激に伸び縮みされるので、それが痛みに繋がります。
陸上
短距離ではスタートダッシュ、中・長距離では長く走ることで、股関節の前側や外側を痛める場合が多いです。
多いのは、走りすぎで股関節の使いすぎによる筋肉・腱の炎症やインピンジメントです。
スタートダッシュでの急激な筋肉の伸び縮み、走る距離が長くなり筋肉が反復して伸び縮みすることで、摩擦による筋肉や腱の周りで炎症が起こります。
また、筋肉が硬くなると、関節のはまり込みも上手くいかず、インピンジメントが起こる場合もあります。
スポーツをしている子供の股関節の痛みで考えられること
股関節を痛める子供が多いスポーツとどんな動きで痛くなるのかを解説しました。
ここでは、スポーツをしている子供の股関節の痛みで考えられることを5つ紹介します。
- グロインペイン症候群
- 単純性股関節炎
- ペルテス病
- 成長痛
- 大腿骨頭すべり症
グロインペイン症候群
症状としては、ランニングや起き上がり、キック動作など腹部に力を入れたときに鼠径部やその周辺に痛みが生じます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
簡単に言うと、使いすぎによって摩擦が起こる事による炎症が原因です。
キックやランニングなど股関節を使う動きの繰り返しが、鼠径部を通る筋肉や腱の周りで摩擦による炎症を起こすことで痛みが起こります。
特徴的なのが、他の競技に比べてサッカー選手に多く見られ、一度発症すると治りにくいとされています。
単純性股関節炎
何らかの原因で股関節に炎症が生じ、関節液が過度にたまる一過性の関節炎のことを指します。
原因としては、風邪やスポーツなどによる軽微な外傷が多く、歩く時や股関節を動かす際に痛みが出ることが特徴です。
子供の股関節の痛みでは比較的頻度が高く、予後も良好である場合がほとんどなので、それほど心配なものではありません。
ですが、股関節炎だと思っても別の病気の可能性もあるため、子供が股関節の痛みを訴えていたら一度整形外科を受診するのが無難でしょう。
ペルテス病
股関節を形成する大腿骨頭と呼ばれる部分に栄養を送られる血液が何らかの原因で途絶え、骨が壊死し、潰れて変形してしまう病気です。
大人では似たような病気で大腿骨頭壊死症があります。
軟骨に覆われた大腿骨頭が関節内に深く納まっているため血管が少なく、血流障害を起こすと骨の壊死が引き起こされ、その壊死した骨の部分が大きいと体重を支えきれなくなって、潰れてしまい痛みが出てくるとされています。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
上述した単純性股関節炎と症状が似ていますが、ぺルテス病は早期発見、治療が重要なので、少しでも疑われる場合は早めに整形外科を受診しましょう。
成長痛
成長痛は病名ではありませんが、幼児から思春期の成長期に認める子供の繰り返す足の痛みを指し、特に治療すべき病気を認めない場合に使われます。
皆さんも子供の頃に経験あると思いますが、夕方から朝方にかけて股関節や膝の周り、足首などに痛みがあるが、朝になると痛みがなくなっていることが特徴的です。
上述した股関節炎などは股関節が炎症しているので、股関節が痛いと明確に痛い場所が分かることが多いですが、成長痛の場合はこれといって痛い場所がはっきりしないことも多いです。
なので、成長痛に関しては特に心配せず時間が経てば軽快します。
大腿骨頭すべり症
子供の頃は成長軟骨板と呼ばれるものがあり、これが体の成長に応じて伸びたり太くなって大人の骨になっていきます。
大腿骨頭にも成長軟骨板があり、この不完全な部分で骨がすべってずれてしまうことを大腿骨頭すべり症と呼びます。
原因は成長軟骨板が脆くなってしまうことで、一番脆くなるとされる小学校高学年から中学性でよく発症します。
特に肥満の子供に起こりやすく、体重が増えても骨が成長についていけないため、大腿骨頭に負担がかかり、成長軟骨板の部分で骨がすべりやすくなるのです。
慢性化しやすい病気とも言われ、発症初期は股関節のこわばりや軽い痛みであることがほとんどなので、そのまま放置されやすく、その結果、進行すると痛みが強くなったり歩き方がおかしくなってしまいます。
最悪の場合、骨頭壊死につながるので注意が必要です。
スポーツをしている子供の股関節の痛みを改善する方法
ぺルテス病や大腿骨頭すべり症のような骨の変形などを伴う場合、場合によっては手術が必要なこともあります。
ただ、グロインペイン症候群や股関節炎の場合は自分で改善できることもあります。
また、ぺルテス病でも医師の診断の元、股関節の柔らかくするように指示が出ることもあります。
運動やストレッチなどのセルフケアが許可されている前提で、スポーツをしている子供の股関節の痛みを改善する方法を4つ紹介します。
運動量の調整
成長期の子供はまだ体が出来上がっていません。
そのような状態で、長時間、高頻度で運動をすることは体にとって負担が大きすぎることもあります。
スポーツがきっかけで股関節の痛みが出ているのであれば、まずは運動量を調整することを考えましょう。
痛みが出たら、まずは安静にする期間を作り、痛みの軽減にあわせて徐々に運動量を増やすようにしましょう。
ストレッチ
股関節の痛みの原因となりやすく、スポーツで負担のかかりやすい筋肉として、腸腰筋と内転筋が挙げられます。
今回はこの2つの筋肉に対するストレッチの方法を紹介します。
腸腰筋のストレッチ
腸腰筋は腰の背骨の前から股関節の付け根に向かって伸びています。
腸腰筋はいわゆるインナーマッスルで、股関節を安定させるために重要な筋肉です。
ですが、腸腰筋が硬くなると、上手く股関節を安定できず、炎症やインピンジメントが起こる可能性があるので、腸腰筋をストレッチすることが必要となります。
- 膝立ちになる
- 片足を前に出し、後ろ側の膝をできるだけ遠くにつく
- 前側の膝に体重をかけ、後ろ側の股関節を伸ばす
- そのまま10~20秒キープする
内転筋のストレッチ
内転筋は恥骨から太ももの内側を通って膝に向かって伸びています。
太ももの内側にあるので、普段の生活ではあまり伸びる機会がありません。
ですが、サッカーのシュートでは足を大きく前へ蹴りだすので、内転筋が強く伸ばされます。
この時、内転筋が硬いと伸ばされた時に筋肉を傷める可能性があります。
なので、内転筋をストレッチすることも重要です。
- 膝立ちになる
- 片足を体の真横にくるように置き、つま先と膝が真横を向くようにする
- 真横に置いた膝に体重をかけ、反対側の足の内ももを伸ばす
- そのまま10~20秒キープする
マッサージ
前ももにあり、股関節の付け根から膝にかけて伸びる大腿四頭筋という筋肉が硬いと股関節の動きが悪くなりやすいです。
大腿四頭筋は本来、膝を伸ばすために働きます。
ですが、股関節にも付いているため、硬くなると股関節の動きを制限してしまいます。
ストレッチしても良いですが、比較的自分でマッサージしやすい場所にあるので、併せてマッサージもするとより効果的です。
- 膝のすぐ上を手の水かき部分に当たるようにつかむ
- 軽く圧迫したまま、左右に動かす
- 膝の上から股関節の付け根まで満遍なく行う
筋トレ
上述した通り、硬くなりやすいのは股関節の前側にある筋肉が多いです。
筋肉の特性として、ある筋肉が働くと反対側にある筋肉は緩むというものがあります。
今回の場合で言うと、股関節の前側の筋肉に対して、反対側の筋肉はお尻の大殿筋や裏もものハムストリングスという筋肉です。
これらの筋肉がきちんと働けば、股関節の前側の筋肉が硬くなりにくくなるので、痛めることも少なくなるでしょう。
- 仰向けで両膝を立てる
- お尻を持ち上げ、体と一直線になるまで持ち上げる
- 10~20回を1~3セット程度繰り返す
膝を立てる際、足の位置をお尻に近づけて持ち上げると大殿筋、お尻から遠ざけて持ち上げるとハムストリングスが働きやすいので、足の着く位置を変えつつ行うと良いでしょう。
まとめ
股関節を痛める子供が多いスポーツ、その際に考えられること、股関節の痛みを改善するための方法について解説しました。
子供は正確に症状を訴えらないことも多いので、親が普段とのちょっとした違いに気づいてあげることが大切です。
成長痛のような大したことはない痛みもありますが、大腿骨頭すべり症やぺルテス病のように場合によっては手術が必要な病気もありますので、早めに整形外科を受診することを考えましょう。
また、グロインペイン症候群などは自分でストレッチなど対策することも可能ですので、本記事を参考に試してみてください。