「歩いているとだんだん痛くなる」
「歩き始めでズキっとする」
「運動した後にだるくなる」
股関節の外側に起こるこんな痛みを抱えていませんか?
股関節でも特に外側に痛みや違和感を覚える人は多く、歳を重ねるごとにその痛みは強くなってしまいます。
「病院に行くほどではないかな?」と放っておくと、歩けないほどの痛みにつながってしまうこともあります。
早めに対処できるよう、本記事では痛みの原因から対処法までをわかりやすく解説していきます。
股関節の外側が痛い時に考えられること
股関節の外側の痛みに悩まされたとき、考えられるのが関節と筋肉の問題です。
その中でも代表的なものに、
- 変形性股関節症
- 臼蓋形成不全
- 筋肉の痛み
の3つがあります。
運動の後や、久しぶりに運動をしたことで筋肉痛になるなどの筋肉の痛みは数日でよくなるケースがほとんどです。
反対に、特に運動した覚えもないのに普段の生活でも痛むなどの比較的長く続く痛みは上の2つのような股関節の病気が関係している可能性があります。
変形性股関節症
40〜50代以降に多くみられる関節の病気です。
股関節は骨盤という受け皿に先端が丸い大腿骨の頭がはまり込む形をとっており、うまく転がったり滑ったりしながら自由自在に動くことができます。
ところが、関節内の軟骨が歳をとるにつれすり減ってしまったり、急に体重が増えるなど関節に掛かる負担が増えてしまうと痛みが出てしまいます。
徐々に関節の変形が進んでくると動きが制限されたり歩くことが困難となってしまいます。
- 股関節が変形してうまく骨頭がはまり込まない
- 関節の動きに制限が生じる
- 変形が進み痛みや違和感が生じる
これが変形性股関節症です。
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症状
股関節症の主な症状は、関節の痛みと機能障害です。股関節は鼠径部(脚の付け根)にあるので、最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。
関節症が進行すると、その痛みが強くなり、場合によっては持続痛(常に痛む)や夜間痛(夜寝ていても痛む)に悩まされることになります。
一方日常生活では、足の爪切りがやりにくくなったり、靴下が履きにくくなったり、和式トイレ使用や正座が困難になります。また長い時間立ったり歩いたりすることがつらくなりますので、台所仕事などの主婦労働に支障を来たします。階段や車・バスの乗り降りも手すりが必要になります。
■参照元:公益社団法人日本整形外科学会
臼蓋形成不全
股関節の受け皿に当たる臼蓋は子供の成長に伴って発育していきます。
これが、何らかの原因で発育不足となったのが臼蓋形成不全です。
▼症状
臼蓋形成不全
小児期の臼蓋形成不全は基本的には乳児の時に超音波やX線(レントゲン)で診断される画像上の診断名なので、臨床的に問題となるような症状はありません。
ただ発育性股関節形成不全のように、大腿の皮膚溝(しわ)が非対称であったり、脚の開きが悪いこと(開排制限)があります。参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
変形性股関節症に見られるような、動き始めや動いた後に股関節の前や外側に痛みが生じる場合が多くみられます。
病気の進行に伴い痛みは悪化し関節自体の動きが制限されてしまいます。
- そもそも骨盤のかぶりが浅くて動きが狭い
- 受け皿と大腿骨頭の大きさが合っていないため、少しの動きで違和感を感じやすい
これが股関節の外側の痛みにつながってしまうのです。
筋肉の痛み
骨には痛みを感じる神経が通っていないため、関節のつくり自体に問題が無い場合、痛みの原因でまず考えれるのは筋肉の痛みです。
体の中でもとりわけ大きな関節である股関節のまわりには、たくさんの筋肉がついています。

運動のしすぎや、無理な姿勢での動作などで筋肉にストレスが掛かると炎症を起こしてしまいます。
もともと体が硬い人など筋肉がうまく伸び縮みしなくなると、すこしストレスが加わっただけでも無理に引き伸ばされた筋肉が傷ついてしまうことがあります。
このように、なんらかのストレスが加わり筋肉に炎症が生じると痛みとして感じてしまいます。
股関節の外側が痛くなる原因
股関節の外側に限定した痛みの原因には
- 関節の構造の問題
- 筋肉が硬い
- 走りすぎ
の3つが考えられます。
関節の構造の問題
骨盤という受け皿に丸いボール状の大腿骨頭がはまり込む形をする股関節は
- 曲げる・伸ばす
- 開く・閉じる
- 左右へねじる
といろんな方向に動かせる自由度の高い関節です。
しかし、言い換えると自由度が高いぶん不安定となりやすい関節でもあります。
臼蓋形成不全のようにもともと股関節のつくりが浅いのがよくあるケースです。
重たいものを支えるとき、小さい受け皿よりも大きい受け皿の方が重さを分散させることができますよね。
臼蓋形成不全は受け皿が小さいケースの病気で、普通の人よりも股関節への負担がかかりやすくなってしまいます。
歳をとるにつれ体重や活動量が増え、股関節を守っている軟骨がどんどんすり減ってしまいます。
これが痛みとなってしまいます。
筋肉が硬い
- 同じ姿勢でじっとしていることが多い
- デスクワークが多い
- 運動不足
- もともと体が硬い
- 足を組んだり片足重心のクセがある
どれか一つでも当てはまる人は、股関節まわりの筋肉が硬くなってしまいやすいです。
例えば、椅子に座っている状態の股関節は
- 曲がった状態
- 閉じた状態(足を組むクセがある人は特に)
の状態で長時間強いられてしまいます。
これが毎日のように続くと
- 後ろに伸ばす
- 外に開く
- 左右にねじる
時にはたらく筋肉は一向に使われなくなってしまいます。
伸び縮みしなくなった筋肉は徐々に硬くなってしまい血の巡りが悪くなってしまいます。
次第に股関節の動きの幅が狭くなってしまいます。
この状態で歩きすぎたり重いものを持つなどの無理な負荷が掛かると、筋肉や腱が引き伸ばされて炎症につながってしまいます。
これが痛みにつながってしまいます。
走りすぎ
ランニングやジョギングが趣味で股関節の外側に痛みを抱えている人は走り過ぎが原因となっているかもしれません。
「たくさん走っても痛みが出ない人もいるのになぜ自分だけ……?」
と思ってしまいますよね。
そんな人は以下の原因が関係しているかもしれません。
- 走り方に問題がある
- 筋力不足
- 筋肉が硬い
- シューズが合っていない
特に上の3つは、走れば走るほど股関節への負担を強めてしまいます。
次第に耐えられなくなると筋肉や股関節まわりのその他の組織に炎症を引き起こしてしまいます。
特に、股関節の外側の痛みは大転子を守るクッションである滑液包が炎症を起こしている可能性があります。
痛みが強い場合は、一旦走るのを中止し安静にすることが優先です。
痛みが落ち着いたら、次で解説していく対処法を実践して痛みの根本から治していきましょう。
※痛みが強くなる場合や患部が腫れたり熱を持っているような炎症症状が見られる場合は早めに病院を受診しましょう。
シューズのクッション性の低かったり、足に合っていないことも、地面から受ける衝撃が強くなり股関節を痛めてしまう原因となります。
街中などコンクリートを走る人は特に、自分のランニングシューズを見直してみましょう。
股関節の外側の痛みに効果的なストレッチ
ここでは股関節の外側の痛みにつながりやすい
- 太ももの外側の筋肉
- 臀部の筋肉
- 内側の筋肉
のストレッチを紹介します。
太ももの外側の筋肉
太ももの外側には中臀筋や大腿筋膜張筋と呼ばれる大きな筋肉があります。
骨盤を横から支える筋肉で歩いたりする際に負担がかかりやすいため、疲れて凝り固まってしまうと痛みにつながってしまいます。
仰向けで行える簡単なストレッチを紹介します。
寝る前や朝起きた時にしっかりと伸ばす習慣をつけていきましょう。
- 仰向けになり両膝を立てる
- 右足を左足の上に掛け、そのまま右へ足を倒す
- 左の股関節の外側が伸びているのを感じながら20秒キープ
- 反対も同様に行う
臀部の筋肉
座りっぱなしや歩き方のくせなどによって、使われなくなると硬くなりやすいのがお尻の筋肉です。
ここが硬くなると股関節の動きが制限されてしまったり、坐骨神経痛などの他の病気にもつながってしまいます。
お尻全体を伸ばすストレッチとお尻のインナーマッスルを伸ばすストレッチの2種類を紹介します。
2つ合わせて行ってみましょう。
お尻全体を伸ばすストレッチ
このストレッチの注意点は腰を丸めたり反ったりしないようにすることです。
無理に力んでしまわないように、息を吐きながらゆったりとした気持ちで行いましょう。
- 仰向けになり片膝を両手で抱える
- そのまま膝を胸に近づけるようにし20秒キープ
- 反対も同様に行う
インナーマッスルのストレッチ
椅子に座って行えるストレッチです。
デスクワークの合間などにこまめに行うとより効果的です。
- 椅子に腰をかけ、片方の足首をもう片方の膝の上にのせる
- そのまま上半身を前に倒す
- お尻の伸びを感じながら20秒キープ
- 反対も同様に行う
内側の筋肉
股関節の内側には内転筋群と呼ばれる大きな筋肉があります。
骨盤と大腿骨をつなぐ内転筋群が硬くなると、骨盤のゆがみやO脚などの足の変形にもつながってしまいます。
今話題のカエル足で行う簡単なストレッチを紹介します。
硬くなって痛みを感じる人は、お風呂上がりなどで体が温まっている時に行うと効果的です。
- 四つ這いの姿勢から両膝を肩より広めに広げる
- 両肘を付き、お尻を後ろに突き出すように下げていく
- 腰が丸まらないように注意し内もも伸ばす
- 20秒キープを2セット行う
股関節の外側の痛みに効果的なストレッチ以外の治療
ストレッチで筋肉がほぐれると痛みが良くなることは多いですが、それでもよくならないケースもあります。
その場合は
- 動き方の修正
- マッサージ
- 筋トレ
- 減量
など、自分に必要な対処法をプラスしてみましょう。
動き方の修正
股関節の外側に負担が掛かる動きでよくあるのが以下の4つです。
- 片足重心や足を組むクセがある
- 荷物を片側ばかりで持つ
- 歩くときにお尻が左右に揺れてしまう
- 歩く時につま先と膝の向きがバラバラになつ
上の2つのような左右のどちらかに負担がかかる動作は、当然どちらかの股関節に負担が偏ってしまいます。
立つ時や座る時はしっかりと両足を地面につけ、股関節に余計な負担が掛からないように上半身をしっかりと引き上げて重心を高く保つことが重要です。
また、下の2つのような歩き方にクセがあるケースも少なくありません。
お尻が左右に揺れてしまう人は、軸を真っ直ぐ保ち、足の内側で体重を支える意識を持つようにしてみましょう。
歩く時はつま先と膝が同じ向きになるように注意し、体のバランスが崩れないように注意することも大切です。
マッサージ
なかなかストレッチでは伸ばしにくい部分はマッサージで集中的にほぐすことも効果的です。
ここでは誰でも簡単に行えるように、テニスボールを使って股関節をほぐす方法を紹介します。
特に硬さの感じる部分は、痛みのない範囲でまずはやさしくマッサージをしてみましょう。
股関節の外側のマッサージ
股関節の外側の筋肉をほぐすマッサージです。
痛みの原因となりやすいお尻の筋肉を中心に、徐々に範囲を変えながらほぐしていきましょう。
- 横向きになり床とお尻の間にテニスボールを当てる
- 硬くなっている部分にテニスボールが当たるように調整する
- そのままゆっくりと押し当てるようにしてマッサージ
お尻のマッサージ
お尻全体のマッサージです。
硬くなっている部分を探りながら徐々に場所を変えて全体的にほぐしていきましょう。
痛みで力んでしまわないように、ゆったりとした呼吸で行ってみましょう。
- 仰向けになり、両膝を立てる
- お尻の下にボールを当て、ゆっくりと体重を掛けていく
- 徐々にボールの位置をずらしながらマッサージ
筋トレ
股関節まわりの筋肉に左右差があったり、お尻まわりの筋肉が低下してしまうと股関節の外側の痛みに繋がってしまいます。
股関節を内側から支えるインナーマッスルと外側から支える中臀筋を鍛えるトレーニングをご紹介します。
どちらもセットで行うことでより効果的です。
インナーマッスルのトレーニング
このトレーニングの注意点はお尻の余計な力を抜くことです。
しっかりとインナーマッスルに効かせていきましょう。
- 横向きに寝転がり、両膝を曲げる
- 足首はそのままで、上の膝をくるりと天井を向くように広げる(※この時に上のお尻に力が入っていればOK)
- ゆっくりと元に戻す
- 左右20回ずつ行う
中殿筋のトレーニング
先ほどのトレーニングと同様に横向きで行います。
足を動かした時に骨盤が倒れてしまわぬよう注意して行いましょう。
- 横向きに寝転がり下の膝は曲げて骨盤が倒れないようにする
- 上の膝はピンっと伸ばした状態でやや後ろ+天井方向に持ち上げる
- ゆっくりと下ろす
- 左右20回ずつ行う
減量
体重が重いと当然、その分股関節へのストレスは大きくなります。
減量を考える一つの目安がBMIです。
成人では国際的な標準指標であるBMI(Body Mass Index:体格指数)を用いて肥満の判定を行います。
BMIの求め方
BMI=体重(kg)÷身長(m)の2乗
表1:肥満度の判定基準(日本肥満学会) BMI(数値の範囲) 肥満度の判定 18.5未満 低体重 18.5以上25未満 普通体重 25以上30未満 肥満(1度) 30以上35未満 肥満(2度) 35以上40未満 肥満(3度) 40以上 肥満(4度) 参照元:健康長寿ネット
BMIが標準より大きい場合は、まずは食生活を見直してみましょう。
- 3食決まった時間に食べる
- バランスの良い食事を心がける
- 揚げ物やジャンクフードを控える
- お酒や嗜好品を控える
- 夜寝る前3時間までに食事を終える
- 水分をこまめにとる
これらのうち1つでもできることから始めてみましょう。
自分がどれだけ食べているかわからないという人は、食べたものを記録することも効果的です。
今では、スマホのアプリで記録できるものもあるので上手く活用して見るのもオススメです。
まとめ
股関節の外側の痛みは、関節の構造に問題があるケースと筋肉に問題があるケースの大きく分けて2つの原因があります。
このうち、関節に問題を抱えるケースは重症化する前に一度病院で診てもらうことが大切です。
筋肉に問題があるケースでは、日頃のケアで痛みを改善させることができます。
本記事で紹介したストレッチやマッサージ、筋トレを参考に自分に必要な対処法をぜひ実践してみてください。