股関節を動かすと痛い、歩くと股関節が痛い。
こんな時、痛みの原因は股関節が歪んでいるからと思っていませんか?
しかし、必ずしも股関節が歪んでいるからといって痛みが出るわけではありません。
むしろ、歪みがない人の方が少なく、歪みがなく完璧に左右対称の方はいません。
誰でも少なからず歪みはあるのです。
そこで今回は、股関節が歪む原因、歪んでいるというのはどういった状態か、股関節の痛みに歪みが関与しているケースとそうではないケースについて解説します。
目次
股関節が痛い時に考えられること
股関節が痛い時に考えられることとして、骨折などの外傷を除くと主に以下の2つが考えられます。
- 変形性股関節症
- グロインペイン症候群
それぞれ解説します。
変形性股関節症
変形性股関節症とは、股関節が変形し、関節の隙間が狭くなったり、関節に面する骨が硬くなることで、関節の痛みや動かしにくくなることを指します。
主な症状は、関節の痛みと機能障害です。
股関節は鼠径部(脚の付け根)にあるので、最初は立ち上がりや歩き始めに脚の付け根に痛みを感じます。
関節症が進行すると、その痛みが強くなり、場合によっては持続痛(常に痛む)や夜間痛(夜寝ていても痛む)に悩まされることになります。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
股関節の変形や関節の狭さがある状態で関節を動かしていると、関節内で骨がこすれて摩耗して炎症を起こしたり、関節の動きが悪くなって筋肉が過剰に働く部分が出てきます。
その結果、痛みや動きの悪さを助長してしまい、日常的に痛みを感じるようになります。
グロインペイン症候群
症状としては、ランニングや起き上がり、キック動作など腹部に力を入れたときに鼠径部やその周辺に痛みが生じます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
サッカーのキックなど特定の動きの繰り返しや股関節に負担が集中するような体の使い方が原因で、炎症が起こることで痛みが出ます。
鼠径部を通る筋肉や腱は、股関節の前後の動きでこすれて摩擦が起こりやすいです。
そういった動きを繰り返すことで、次第に炎症が起こり、痛みに繋がります。
特徴的なのは、他の競技に比べてサッカー選手に多く見られ、一度発症すると治りにくいとされています。
股関節が歪む原因は?
股関節は痛みの直接的な原因ではないことが多いですが、歪みは少なからず誰にでも存在します。
では、股関節が歪んでしまう原因にはどのようなことが考えられるか。
主な原因は以下の4つです。
- 妊娠、出産
- 普段の姿勢の問題
- 筋肉が硬い
- 同じ動きを繰り返している
それぞれ解説します。
妊娠、出産
股関節は太ももの骨である大腿骨と骨盤で作られています。
女性は妊娠、出産を経て、骨盤の靭帯が緩くなったり、骨盤が広がったりして歪む場合があります。
妊娠や出産で股関節自体が歪むわけではありませんが、骨盤が歪むことで間接的に影響を受けて股関節が歪むことがあります。
普段の姿勢の問題
普段からの姿勢が悪いと股関節も歪みやすくなります。
股関節は膝や指の関節と違い、球体なのであらゆる方向へよく動くことが理想です。
ですが、日常的に座っていることが多かったり、足を組む癖があったり、偏った体の使い方をしていると、股関節は歪みやすくなります。
筋肉が硬い
股関節の筋肉の硬さがあると、股関節は歪みやすくなります。
筋肉は骨についていて、力を入れると縮んで骨を引っ張ることで関節が動きます。
ですが、筋肉の硬さがあると、力を入れてなくても骨を引っ張ることになるため、硬さがある方向へ歪むことになります。
同じ動きを繰り返している
普段から悪い姿勢や同じ姿勢をしていると歪みやすいのと同じで、普段から同じ動きを繰り返すことでも歪みやすくなります。
立って作業することが多かったり、階段を昇り降りすることが多かったり、しゃがんだり立ったりすることが多いなど、股関節を使う動きを反復することが原因になります。
同じ動きを繰り返すことで、特定の筋肉ばかりを使い、その筋肉が硬くなりやすいので、その結果、股関節が歪んでしまう可能性があります。
股関節周辺の歪みでよくあるタイプ
普段の姿勢や筋肉の硬さで股関節が歪むと言いましたが、歪むのにはよくある3つのタイプがあります。
それが以下の3つです。
- 骨盤が前に倒れて内股になりやすい
- 骨盤が後ろに倒れてガニ股になりやすい
- 骨盤の高さが左右で違う
それぞれ解説します。
骨盤が前に倒れて内股になりやすい
上述した通り、骨盤によって股関節は間接的に歪みます。
骨格の構造によって、どう歪みやすいかがある程度決まっています。
骨盤が前に倒れた場合、股関節は内側にひねりやすく、内股になりやすいです。
いわゆる、反り腰のような姿勢でなりやすく、反対に外側にはひねりにくくなります。
骨盤が後ろに倒れてガニ股になりやすい
骨盤が後ろに倒れた場合、股関節は外側にひねりやすく、ガニ股になりやすいです。
こちらは猫背のように背中から腰まで丸くなっているとなりやすく、反対に内側にひねりにくくなります。
骨盤の高さが左右で違う
例えば、右側に体重をかけて立っていると、骨盤の右側が高く、左側が低くなりやすい傾向にあります。
他には、左脚を右脚に組んで座る癖がある方は、骨盤の右側が低く、左側が高くなりやすい傾向にあります。
左右均等に体重をかけて立ったり、座っていたりすることはほぼ不可能で、誰しもが楽な方へ体重をかけるので、骨盤の左右で高さは異なります。
股関節の『歪み=痛み』とは限らない
ここまで股関節が歪む原因とよくある歪みのタイプについて解説しましたが、股関節が歪んでいるからといって、それが痛みに繋がるわけではありません。
歪んでいても痛くない場合もあるし、痛い場合もあります。
ここでは、歪んでいても痛くない場合について解説します。
歪みがあっても股関節が痛くない人はたくさんいる
ここまで解説した通り、妊娠や出産、普段の姿勢や動き、筋肉の硬さで股関節は簡単に歪みます。
歪みと言うと大きなずれをイメージするかもしれませんが、少しであっても歪みは歪みです。
変形性股関節症や股関節の骨折後のように明らかに股関節が歪んでいる場合でも、痛みが特にない方もいます。
なので、股関節の歪みが痛みに直結しているわけではないのです。
多くの人の股関節は歪んでいるのが普通
ほぼ全ての方は歪んでいるのが普通です。
全くの左右対称で立ったり座ったり、動く方はいません。
必ずその人特有の姿勢や動きの癖があるので、それに合うように股関節に関わる筋肉も働きます。
すると、左右で働く筋肉が違うのも当然で、歪みも左右で違うはずです。
体の硬さも左右で全く同じではないですよね。
それと同じで、左右で非対称なのが普通で、歪みも少なからずあるのが当たり前なのです。
ですが、全ての方が痛みがあるわけでもありません。
ただ、多少の歪みは痛みを起こすほど問題にはなりませんが、あまりにも歪みが大きい場合は痛みに繋がる可能性はあります。
股関節の痛みの原因が歪みであるケース
歪みは誰でも少なからずあるのが普通なので、痛みと直接関係あるわけではないと説明しましたが、歪みが痛みに繋がる場合もあります。
ここでは、股関節の歪みが痛みに繋がる場合について解説します。
歪みが大きい人
誰でも多少の歪みはあるのが普通ですが、歪みが大きくなると痛みに繋がる可能性は高くなります。
例えば、片方の股関節の怪我が原因で、股関節の前側の筋肉が硬くなってしまい、後ろへ伸ばすのが制限されたとします。
この制限が大きいほど、真っ直ぐ歩くにはどこかでかばって歩く必要があります。
それが股関節に過剰な負担となって痛みに繋がる場合があります。
運動量が多い人
多少の歪みは基本的に問題となりませんが、あまりにも運動量が多い場合は歪みが小さかったとしても痛みに繋がる場合もあります。
小さな歪みでも過剰な運動量で反復すると、負担も積み重なり、その結果、痛みに繋がる可能性があります。
股関節の痛みの原因が歪みではないケース
もし、股関節の痛みの原因が歪みとは関係ない場合、整体で歪みをとってもらったとしても痛みは良くならない可能性が高いです。
その場合、歪み以外の痛みを起こしている原因を何とかしないといけません。
ここでは、歪みを修正しても痛みが治らないケースと筋肉が痛みの原因であるケースについて解説します。
歪みを修正しても痛みが治らないケース
骨盤が左右や上下に歪んでいるとか、股関節のねじれが左右で違うなど、歪みは目で見てわかるため、痛みと結びつけてしまいやすいです。
ですが、何度も解説している通り、多少の歪みは誰でもあるのが普通なので、歪み自体が痛みの原因ではないことの方が多いです。
なので、見かけ上の歪みを修正したとしても、痛いと関係なかったら当然痛みは良くなりません。
筋肉が痛みの原因のケース
痛みを起こしている原因が歪みではなく、筋肉にある場合は筋肉を何とかしないといけません。
筋肉の硬さ自体も股関節の歪みを作る要因の1つではありますが、歪みを作るのは筋肉の硬さ以外にもたくさんの要因があります。
なので、歪みを修正しても筋肉の硬さがとれるわけでもなく、歪みと筋肉の硬さは別物として考えた方が良いです。
そして、筋肉の硬さは筋肉にある痛みを感知するセンサーを刺激したり、血流を悪くして痛みの物質を出現させたりするため、痛みに繋がります。
この場合は、この筋肉の硬さを何とかしないと歪みを修正しただけでは股関節の痛みは良くならないのです。
股関節の歪みを改善する方法
とは言っても、股関節の歪みを改善した方が、運動などで股関節にかかる負担も少なくすることはできます。
股関節の歪みを改善するには以下の2つの方法が挙げられます。
- 日常生活動作に気をつける
- ストレッチ
日常生活動作を気をつける
日常的に左右非対称となるような姿勢や動きには日頃から気をつけましょう。
例えば、よく右脚を組む癖がある方は、左脚でも組むようにすることで、どちらか片方に歪むのを予防することができます。
他にも、左脚に体重をかけて立つ癖がある方は、左ばかりではなく、右脚にも体重をかけるように意識すると歪むのを予防することができます。
左右対称で生活するのは不可能なので、できるだけ反対も使うように意識すると良いでしょう。
ストレッチ
硬い筋肉を日頃からストレッチしておくと、筋肉の硬さで股関節が歪むのを予防することができます。
今回は普段の生活ではあまり伸ばされることのない、内ももにある内転筋のストレッチをご紹介します。
内転筋は恥骨から太ももの内側を通って膝に向かって伸びています。
- 膝立ちになる
- 片足を体の真横にくるように置き、つま先と膝が真横を向くようにする
- 真横に置いた膝に体重をかけ、反対側の足の内ももを伸ばす
- そのまま10~20秒キープする
まとめ
股関節の痛みの原因は歪みではないことを解説しました。
多少の歪みは誰でもあるのが普通で、骨盤が傾いているとか足の長さが多少違うのはおかしいことではありません。
むしろ、全くの左右対称で生活を送れる人の方がおかしいのです。
それに、歪みがあるからといって痛みに繋がるわけではありません。
もし、歪みがあることが痛みに繋がるのであれば、ほとんどの人が痛みを感じているはずですが、そうではないですよね。
なので、歪みに拘らずに、痛みがあるとしたら何が原因なのかを冷静に考えてみることが必要でしょう。