膝の内側の痛みは、運動や日常生活に影響を与えることがあります。
しかし、効果的なストレッチを実践することで、痛みを軽減し、運動能力の回復を図ることも期待できます。
今回は、理学療法士が徹底解説する、膝の内側の痛みの治し方として効果的なストレッチ5つをご紹介します。
実践していただくことで、膝の内側の痛みを和らげ、運動能力を回復することができるでしょう。
また、ストレッチでは効果が期待できない場合も解説していますので、闇雲にストレッチする前にご自身の症状がどれに当てはまるかを確認した上で実践しましょう。
目次
膝の内側の痛みで考えられること3つ
膝の痛みは、さまざまな要因によって引き起こされる決して珍しくない問題です。
過去のトラウマ的な出来事、元々患っている基礎疾患、日常生活による膝への過負荷が原因である可能性があります。
膝の内側の痛みが起こるメカニズムとしては、膝の内側を構成する組織の損傷や炎症、膝の変形や動作の繰り返しによる膝内側への過負荷が考えられます。
原因はさまざまですが、本記事では、膝の内側の痛みとして考えられる3つの原因について説明します。
膝の内側が痛むメカニズムを踏まえ、関節、筋肉や靭帯、その他に分けて解説していきます。
関節に問題がある
関節に原因がある場合に考えられることとして、関節炎、滑液包炎などの問題が原因である可能性があります。
痛みを和らげるには、関節が原因だとしても何が問題となっているかを知ることが不可欠です。
例えば、変形性膝関節症や半月板損傷などが膝の内側の痛みとして考えられます。
変形性膝関節症とは、加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎによりすり減り、関節が変形します。
初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれますが、正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
簡単に言うと、加齢で膝が変形することで、立ち上がりや歩行、階段の昇り降りに支障が生じ、痛みも伴うというものです。
特に変形性膝関節症はいわゆるO脚に変形する場合が多く、膝関節の内側や半月板、腱や靭帯などに摩擦によるストレスが生じたり、それに伴う炎症によって痛みが起こりやすいです。
半月板損傷とは、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりを感じたりします。
ひどい時には、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる”ロッキング”という状態になり、歩けなくなるほど痛くなります。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
半月板は膝の内側、外側それぞれにあり、膝へ加わる衝撃を吸収するクッションのような役割と膝を安定させる役割を担っている組織です。
スポーツによる怪我で損傷する場合と変形性膝関節症のように加齢によって傷つきやすくなったところに負担がかかって損傷する場合があります。
筋肉や靭帯に問題がある
膝の内側の痛みは、関節自体に原因がある場合だけでなく、膝の内側に付着する筋肉や靭帯に問題がある可能性も考えられます。
膝の内側に付着する筋肉には、内側広筋や鵞足が付着しています。
鵞足とは、縫工筋、薄筋、半腱様筋の3つの筋肉で構成される部位のことを指します。
筋肉が緊張して硬くなると、筋肉内を通過する血管が圧迫され、血流が悪くなります。
血流が悪くなると、本来は血液に乗って筋肉へ供給される酸素や栄養がうまく行き届かず、筋肉が酸欠に陥ってしまいます。
すると、痛みを引き起こす発痛物質と呼ばれるものが作られるため、筋肉は痛みを感じることになります。
それが膝の内側で起これば、膝の内側に痛みを感じるというわけです。
また、膝の内側には内側側副靱帯と呼ばれる靭帯が付着しています。
内側側副靱帯が膝に付着する他の靭帯の中でも最も損傷する頻度が高く、スポーツや交通事故などで膝が強制的に内側に入ることで損傷する可能性があります。
急性期(受傷後3週間くらい)には膝の痛みと可動域制限がみられます。
しばらくして腫れ(関節内血腫)が目立ってくることもあります。
急性期を過ぎると痛み、腫れ、可動域制限はいずれも軽快してきます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
ですが、そもそも靭帯の役割として、関節の過剰の動きを止めてくれるというものがあるので、靭帯が損傷した状態で放置すると、二次的に半月板損傷や軟骨損傷を引き起こすことがあるので、注意が必要です。
その他
関節や筋肉、靭帯以外の原因として、頻度は少ないですが、疲労骨折による痛みの場合があります。
膝は太ももの大腿骨とすねの脛骨から構成されており、すねの脛骨が疲労骨折することで膝の内側の痛みを引き起こす場合があります。
膝の内側部分の疲労骨折は、ランニングやウォーキングで発生することがあるとされ、その背景には骨粗鬆症が関係するとされています。
もし、疲労骨折だった場合は完全な骨折に至ることも考えられるため、すぐに整形外科を受診して指示を仰ぐことが必要でしょう。
膝の内側の痛みはストレッチで治る?
ストレッチは膝の内側の痛みを和らげる効果的な方法の1つです。
筋肉の柔軟性を改善し、血流を回復させ、関節への圧力を軽減し、不快感を和らげます。
ただ、上述したような半月板損傷や靭帯損傷など、明らかな組織の損傷がある場合は、ストレッチで筋肉はほぐすことはできても組織が治るわけではないので、根本的な解決にはなりません。
その場だけの一時的には痛みを和らげてくれる効果はあるかもしれませんが、治るとは言えません。
とは言え、組織の損傷がない場合、膝の内側の痛みの原因の多くは筋肉の緊張によるものです。
この場合は、ストレッチによって筋肉がほぐれれば痛みを和らげることも十分に期待できます。
良好な可動性を維持し、怪我のリスクを軽減するためにも定期的にストレッチすることが望ましいでしょう。
膝の内側の痛みに効くストレッチ5選
ここでは、膝の内側の痛みを和らげ、筋肉の柔軟性を向上させるためにできる簡単なストレッチを5つ紹介します。
- 内もものストレッチ
- 外もものストレッチ
- 外もも、おしりのストレッチ
- 前もものストレッチ
- 裏もものストレッチ
これらのストレッチは、血流を回復させ、炎症を軽減し、関節の可動性と安定性を向上するのに役立ちます。
膝の内側が痛みでも、前後や外側の筋肉もバランス良く機能していないと、膝に偏ったストレスが加わるので、内側以外の筋肉をストレッチすることも大切です。
5つもストレッチする時間がないという人は、優先順位が高いストレッチから順に書いてありますので、例えば内もものストレッチだけとか、内ももと外もものストレッチをするなど、1つ、あるいは2つだけでもやってみてください。
では、それぞれ解説していきます。
内もものストレッチ
内もものストレッチは、デスクワークが多い人や猫背の人はやった方が良いです。
内ももの大内転筋という筋肉は、おしりの付け根についており、骨盤を後ろへ傾ける働きがあります。
デスクワークで座っていると、腰は丸くなり、骨盤は後ろへ傾きやすくなるため、大内転筋が縮こまって硬くなりやすいです。
また、猫背の人も背中が丸くなるのに伴い、骨盤が後ろへ傾きやすいため、大内転筋が硬くなりやすいです。
内もものストレッチをすることで、座っていても骨盤が後ろへ傾きにくくなりますし、猫背を修正するのにも役立ちます。
大内転筋は膝の内側にもついているため、ストレッチで硬さがとれると膝の内側の痛みも軽減しやすいです。
- 椅子に浅く腰かける
- 左右の膝を遠ざけるように、足をできる限り大きく開く
- 左右の膝を両手でそれぞれ押さえて固定する
- 股関節から体を前傾させる
- 内ももが伸びる位置で止まって、ストレッチする
- 15〜20秒キープする
- 2〜3回繰り返す
ポイントは、体を前傾する時に腰が丸くならないようにすることです。
腰が丸くなると、内ももがうまく伸ばされないので、あまり伸びている感覚がない場合は腰が丸くなっていないか確認しましょう。
外もものストレッチ
外もものストレッチは、特にO脚傾向の人はした方が良いです。
O脚の人は、股関節が外に開いて、かつ内側にひねっていることが多いので、おしりの横に位置する大腿筋膜張筋や中殿筋が縮こまって硬くなりやすいです。
外もものストレッチをすることで、開いた股関節を適切な位置に戻しやすくなります。
- 横向きに寝る
- 下側の股関節、膝関節を90度に曲げる
- 上側の膝関節を90度に曲げ、膝を床へ向かって近づける
- 膝が床につかない場合は、膝を伸ばしたまま行う
- 膝、あるいは足が床についた位置で15〜20秒ストレッチする
- 2〜3回繰り返す
ポイントは、下側の股関節と膝関節はしっかりと曲げておくことです。
曲げておく理由としては、しっかり曲げると骨盤が固定されて動きにくくなるので、ストレッチを行いやすいからです。
反対に、ここが不十分だと骨盤がうまく固定されずぐらぐらするので、うまくストレッチできない、あるいはうまくできているつもりでもしっかりストレッチされていない可能性があります。
外もも、おしりのストレッチ
こちらもO脚傾向の人はした方が良いストレッチです。
O脚の人は、膝が外側へ凸になっているため、立っている時や歩いている時に外ももの筋肉や靭帯で体を支えています。
また、骨盤は後ろへ傾き、腰は丸くなりやすいので、おしりから外ももにかけての筋肉が硬くなりやすいです。
外ももと一緒におしりもストレッチすることで、O脚で崩れた姿勢を修正することができるので、膝へのストレスも軽減することができます。
- 仰向けになる
- 片側の股関節、膝関節を90度に曲げる
- 曲げた側の膝を体の反対側の床へつけるように動かす
- 手で膝を引き寄せて浮かないように固定する
- そのまま15〜20秒キープする
- 2〜3回繰り返す
ポイントは、ストレッチする足と同じ側の肩が浮いてしまいやすいので、浮かないように注意しましょう。
前もものストレッチ
前もものストレッチは、デスクワークが多い人や反り腰の人はした方が良いです。
前ももには大腿四頭筋という4つの筋肉から構成される筋群があります。
大腿四頭筋の中でも大腿直筋という筋肉は、股関節の前側から膝まで伸びており、デスクワークのように座った姿勢でいると硬くなりやすいです。
また、反り腰の人は骨盤が前に傾くので、股関節の前側につく大腿直筋が縮こまり、硬くなりやすいです。
前もものストレッチをすることで、腰を適切な位置に修正しやすく、膝に加わるストレスを軽減してくれます。
- 足を伸ばして座る
- 片側の膝を曲げ、かかとをおしりにつけるようにする
- そのまま仰向けに近づけていく
- 前ももが伸びている位置で止まって、ストレッチをする
- 15〜20秒キープする
- 2〜3回繰り返す
ポイントは、仰向けに近づいていく際、腰を軽く丸めるようにすると、より強く前ももがストレッチされます。
反対に、腰が反ってしまっていると、ストレッチの効果は薄くなってしまうでしょう。
裏もものストレッチ
裏もものストレッチは、デスクワークが多い人や猫背の人はした方が良いです。
デスクワークのように座った姿勢でいると、腰は丸くなり、骨盤は後ろに傾きます。
裏もものハムストリングスという筋肉は、膝を曲げる役割もありますが、骨盤を後ろへ傾ける働きもあります。
なので、骨盤が後ろへ傾くことで、ハムストリングスは縮こまって硬くなりやすいです。
裏ももをストレッチすることで、骨盤が後ろへ傾くのを防いでくれますし、膝へのストレスも軽減することができます。
- 肩幅に足を開いて立つ
- しゃがみ込んで足首をつかむ
- 足首をつかんだまま、膝を伸ばしていく
- 裏ももが伸びている位置で止まって、ストレッチをする
- 15〜20秒キープする
- 2〜3回繰り返す
ポイントは、膝を伸ばしていく際、腰が丸くなっているとうまく裏ももが伸びないので、腰がなるべく丸くならないように注意しましょう。
膝の内側の痛み|ストレッチでは治らないケース
膝の内側の痛みは、ここまで解説したように靭帯の損傷から半月板の損傷、骨折、さらには神経の損傷まで、さまざまな問題によって引き起こされる可能性があります。
残念ながら、ストレッチだけでは膝の内側の痛みを軽減するには不十分な場合があります。
ストレッチだけでは治らないケースの症状としては以下のようなものがあります。
- 安静にしていても痛い
- 電気が走るような痛み
- 膝だけでなく、腰やおしりから足首の方まで痛みが走る
- 強くぶつけた、あるいはひねったなど明らかな受傷起点がある
- 骨折や靭帯損傷、半月板損傷と診断を受けたことがある
安静にしていても痛い場合は、痛む場所で炎症が起こっている可能性が高いです。
炎症がある場合は、それ自体が治らないとストレッチしても痛みはあまり変わりません。
電気が走るような痛みの場合は、神経の損傷や圧迫が考えられます。
筋肉の緊張が神経を圧迫している場合はストレッチも効果があるかもしれませんが、損傷している場合は神経が治るまである程度期間を要するので、ストレッチしても治ることはありません。
膝以外にも腰やおしり、足首まで痛みが走る場合は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症など腰由来の病気の可能性があります。
この場合は原因が腰にあるので、膝の筋肉をストレッチしても根本的な解決にはなりません。
既に骨折など診断を受けた場合や明らかな受傷起点がある場合は、骨や靭帯などの組織の損傷が原因なので、ストレッチしても痛みは治りません。
これらの場合は、原因を特定し、適切な治療計画を見つけるために、医師の診察を受けることが重要です。
膝の内側の痛みがストレッチでは治らない人へ
ストレッチを実践しても効果が感じられない場合は、筋膜リリースもおすすめです。
筋膜リリースについて詳しくは下記の記事を参照ください。
筋膜は筋肉やその他の体の器官を覆う膜です。
運動を繰り返すことで、筋膜が緊張し、可動域が狭くなり、膝の痛みが増すことがあります。
筋膜リリースを使用すれば、運動能力の回復や炎症の減少、将来の怪我を防ぐことができます。
具体的には、膝の緊張している部分を特定し、圧力を加えてゆっくりとリラックスさせます。
また、ストレッチを筋膜リリースと併用することで効果を高めることもできます。
筋膜を伸ばすような運動やストレッチも定期的に行うことで、膝の痛みが軽減し、可動域が拡大することができます。
これらの筋膜リリースやセルフケアを定期的に行うことは、筋膜が原因の痛みの場合に推奨され、痛みを和らげることができるでしょう。
膝の内側の痛みを治したい人は理学ボディ
膝の内側の痛みを今すぐ何とかしたいという方は、理学ボディにご相談ください。
筋膜の施術に精通している理学ボディのセラピストなら、筋膜に存在するピンポイントの硬さでも見つけることができます。
理学ボディでは、筋膜に対して施術を行い、最短で痛みを和らげることにこだわっています。
もし、膝の痛みが良くならなくて困っているという方は、ぜひ理学ボディにお越しいただき、筋膜の施術を受けてみてください。
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すぐにできますので、まずは自宅であなたの痛みがどれだけ改善するのか試してみてください。
まとめ
- 膝の内側の痛みが起こるメカニズムとしては、膝の内側を構成する組織の損傷や炎症、膝の変形や動作の繰り返しによる膝内側への過負荷が考えられる
- 関節に原因がある痛みの場合、変形性膝関節症や半月板損傷が考えられる
- 筋肉に問題がある場合、筋肉の緊張によって筋内の血管が圧迫され血流が悪くなることが痛みの原因の1つ
- 靭帯に問題がある場合、内側の内側側副靱帯は膝の靭帯の中でも損傷しやすい靭帯
- ストレッチは血流の回復や関節の圧力の緩和などの効果が期待できるが、明らかな組織の損傷がある場合は、痛みの改善は期待しにくい
- 多くの場合の膝の痛みは筋肉の緊張によるものなので、ストレッチによる効果も十分期待できる
- 安静にしていても痛かったり、明らかな受傷起点がある場合は、ストレッチをしても良くなる可能性は低いので、すぐに整形外科を受診するべき
- ストレッチの効果が薄い場合は、筋膜に問題があることも多く、その場合は筋膜リリースが効果的かも
今回は膝の内側の痛みに関して、原因を分けて解説し、効果的なストレッチの具体的な方法まで解説しました。
骨折や靭帯損傷など、明らかな組織の損傷が原因で痛い場合はストレッチの効果は薄いです。
ですが、変形性膝関節症などの変形があっても、痛みの原因が筋肉によるものが多くを占めている場合はストレッチは効果的な対処法の1つになるでしょう。
今回はストレッチを5つ紹介しましたので、やり方をよく読みながらご自身に合うものを1つでも実践、継続していただければと思います。