側弯症と言われたことがある、鏡で姿勢を見た時に体が曲がっているから側弯症かもと思っている。
もし、曲がっているから、とりあえず伸ばしてストレッチしたら良いと思っているなら、ちょっと待ってください。
安易にストレッチをすると、やってはいけない方向にストレッチしている可能性があり、かえって側弯を強くしてしまったり、痛みが出現してしまう恐れがあります。
ですが、ご自身の側弯症についてちゃんと理解した上で行うストレッチであれば、側弯症の進行を抑える、姿勢改善にも効果があります。
そこで、今回は側弯症でやってはいけないストレッチを始め、原因や症状、自分でできる評価方法、対策まで解説します。
側弯症でやってはいけない逆効果なストレッチ4選
背骨が曲がっているのだから、それをストレッチで伸ばせば良いんじゃないの?と思うかもしれません。
ですが、側弯症はそんなに単純なものではありません。
以下のようなストレッチはやらない方が良いです。
- 痛みがあるのに無理やりストレッチする
- 反動をつけてストレッチする
- 無理やり強くストレッチする
- とりあえず、曲がっている方向とは反対にストレッチする
側弯症は、単純に左右どちらかに曲がるだけではなく、前後やねじれの動きも加わっている場合があるので、安易にストレッチするとかえって逆効果になってしまう場合もあります。
どこを伸ばして、どこを縮めるのかを姿勢や動きの評価の上で行わないと、良かれと思ってやっていたストレッチで側弯症を強めてしまった、痛みが出現したということにもなりかねません。
それに、もし何も考えずにストレッチしていて良くなるのなら、側弯症で悩む方は多くはいないはずです。
側弯症の日本での発生頻度は1~2%程度で、女子に多くみられます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
100人に1人か2人の発生率なので、そこまで珍しい病気ではないことがわかります。
まずは側弯症についての理解を深め、ストレッチするにしてもどういう方法が良いのかを知った上で行いましょう。
側弯症とは
側弯症とは背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体のねじれを伴うことがあります。
通常、小児期にみられる脊柱変形を指し、左右の肩の高さの違い、肩甲骨の突出、腰の高さの非対称、胸郭の変形、肋骨や腰部の隆起、などの変形を生じます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
何らかの原因によって背中や腰の背骨が左右に曲がる、あるいはねじれている状態を指します。
それによって、肩の高さや腰の位置が左右で違うように見えたり、場合によってはそれが原因で痛みにつながることもあります。
厳密には、背骨が曲がった角度が何度以上と定義されていますが、自分でそれを測るのは難しいでしょう。
側弯症の原因
現在のところ、正確な原因は不明とされており、遺伝や筋肉・皮膚・腱などの結合組織の異常、脊柱の発達異常など様々な要因が関与していると考えられています。
そして、側弯症は原因によって3つに分類されています。
- 突発性側弯症
- 先天性側弯症
- 症候性側弯症
原因不明の側弯を突発性側弯症といい、全側弯症の60~70%を占めます。
そのほか、脊柱の先天的な異常による側弯を先天性側弯症、神経や筋の異常による側弯を症候性側弯症といいます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
特に思春期の女児に多いとされ、年齢が若くして発症するほど進行していくリスクが高いとも言われています。
また、側弯の角度が大きい、側弯が背骨の中で複数ある場合も進行リスクが高くなるので、以下の4つに当てはまる方は一度病院で整形外科を受診し相談することをお勧めします。
- 年齢が若くして側弯症を発症
- 女性である
- 側弯の角度が大きい
- 背骨の中で側弯が複数ある(2ヶ所以上)
側弯症の症状
症状としては、以下のようなものが挙げられます。
- 背骨を真っ直ぐに伸ばすことが難しい、できない
- 背骨を真っ直ぐに伸ばした状態を保つことが難しい、できない
- 姿勢を真っ直ぐ保っていると、次第に痛みを伴う
- 腰痛
- しびれ
- 手足に力が入りにくい、入らない
側弯症の方の大部分が突発性側弯症なので、症状の多くは背骨を真っ直ぐに保てないことや腰痛などの痛みがメインです。
症候性側弯症などの神経の異常が関わってくると、手足の筋肉に上手く力を入れることができず、手足が不自由である場合もあります。
ですが、突発性側弯症であっても、背骨の変形の程度によっては神経の症状が出てくる場合もあります。
側弯症かどうかチェックする方法
側弯症かどうかをチェックする方法は主に以下の3つあります。
- レントゲン
- 前屈テスト
- 鏡の前で真っ直ぐに立つ
それぞれ解説します。
レントゲン
背骨全体のレントゲンから側弯の程度を見ることができます。
レントゲンのメリットは、表面からではなく背骨の側弯を直接見ることができるので、側弯の程度が正確に分かります。
側弯の大きさは、上下で最も傾いている背骨同士のなす角度を測定することで判断されます。
これが10度以上である場合に側弯症と診断されます。
前屈テスト
真っ直ぐ立った状態から膝を曲げずに前屈するテストです。
手順は以下の通りです。
- 手の平を合わせる
- 肩を脱力し両腕を自然に垂らす
- 膝を伸ばしたまま、ゆっくりと前屈する
- あばら骨や腰の位置を左右で比べ、高さに差があるかを見る
例えば、右のあばら骨が盛り上がっていた場合、背中部分の背骨は右に凸となっていることが考えられます。
鏡の前で真っ直ぐに立つ
鏡の前で真っ直ぐに立った時の肩の高さと腰の高さを左右で比べます。
例えば、右肩が左肩に比べて低く、右の腰が左の腰に比べて高くなっている場合。
背中部分では左に凸、腰部分でも左に凸となっており、全体的に左に凸になっていると予測することができます。
この場合、上述した前屈テストと組み合わせると、左側のあばら骨、あるいは腰が高くなることが予測されます。
側弯症の治療・対策
側弯症の治療法としては主に以下の3つあります。
- 装具療法
- 手術療法
- 運動療法
それぞれ解説します。
装具療法
側弯が25〜40°までの軽症あるいは中等度の側弯症に対し、側弯の進行予防、矯正およびその保持のために装具療法が行われます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
プラスチックの素材が一般的ですが、胸から骨盤にかけて側弯のある部位に矯正する力が加わるように装具を装着することで側弯の進行を抑えます。
側弯の進行を抑えるという点が大事なポイントで、装具療法の目的としては背骨を真っ直ぐにすることではなく、あくまでも側弯の進行を抑制することです。
側弯を矯正しながら骨が成熟するのを待ち、骨が成熟したら装具は外します。
また、装具は整形外科医が処方しますし、側弯の角度がある程度大きい方が適応になるので、誰でも装具療法の適応になるわけではありません。
手術療法
手術が適応となるかどうかは、年齢や側弯の部位、程度、腰背部痛などの有無から総合的に判断されます。
基本的には、最初は運動療法や装具療法で側弯の進行具合を観察し、それでも側弯が進行して身体に悪影響が考えられる場合に手術となるので、最終手段として行われます。
手術の方法としては、側弯した背骨を真っすぐに強制し固定します。
真っすぐに固定するので、側弯はきれいになりますが、真っすぐのまま動かない状態となります。
なので、術後は過度に背骨をひねる、曲げ伸ばしするような動き、激しいスポーツを行うと、圧迫骨折やすべり症といった二次的な障害が起こる可能性があります。
あくまでも、治ったわけではなく、真っすぐに矯正して固定しただけという点に注意が必要です。
運動療法
側弯症に対する運動療法の考え方としては以下の2つがポイントになります。
- 凸になっている部分と反対の凹になっている部分を伸ばす
- 伸ばす部分以外は動かないように注意する
例えば、背中部分の凹を伸ばそうとし、腰も一緒に伸びてしまうと、本来伸ばしたい部分が上手く伸びない可能性があるので、背中を伸ばす際は腰が動かないように注意しながら行う必要があります。
運動療法の例を以下に2つ解説しますので、上述した側弯の評価からご自身がどこがどの方向に凸、あるいは凹になっているか確認した上で、実践してみてください。
マーメイド
左に凸になっている場合を想定しています。
ポイントは、常に頭の頂点から糸で引っ張られているイメージで、体幹がつぶれないように注意することです。
具体的な方法は以下の通りです。
- 左足をあぐら、右足をお姉さん座りにし、左手をお尻の横に置く
- 右手を横から頭の上を通るように大きく動かし、体幹の右側が伸びるようにする
- 元の位置に戻る
- 右手をお尻の横に置く
- 左手を横から頭の上を通るように大きく動かし、体幹の左側が伸びるようにする
- 元の位置に戻る
- 繰り返す
サイドブリッジ
こちらも左に凸になっている場合を想定しています。
これもポイントは、常に頭の頂点から糸で引っ張られているイメージで、体幹がつぶれないように注意することです。
具体的な手順は以下の通りです。
- 左肘で体を支えるように横向きになる
- 膝は90度に曲げて、両膝は重ねてそろえる
- 肘と膝で床を押して、お尻を持ち上げる
- 体幹と太ももが一直線になるまで持ち上げる
- ゆっくりと元に戻る
- 繰り返す
まとめ
側弯症は側弯の方向や程度など人によって様々です。
単純に左右どちらかに曲がるだけではなく、前後やねじれの動きも加わっている場合があるので、安易にストレッチするとかえって逆効果になってしまう場合もあります。
どこを伸ばして、どこを縮めるのかを姿勢や動きの評価の上で行わないと、良かれと思ってやっていたストレッチで側弯症を強めてしまった、痛みが出現したということにもなりかねません。
ストレッチや運動療法を行うには、本記事で紹介した評価で、自分がどこが、どの方向に側弯しているのかを把握した上で行うべきです。
また、ストレッチや運動療法の効果が見込めるのは、側弯が軽度の方なので、ある程度大きい側弯の場合は装具療法や手術療法の適応になるので、一度整形外科を受診して指示を仰ぐことをお勧めします。