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シンスプリントに電気治療は効果があるのか理学療法士が徹底解説

 

シンスプリントは電気治療で良くなると思っている方、ちょっと待ってください。

接骨院なんかでよくある電気治療ですが、あれを当てていれば痛みが良くなると誤解される方が多いです。

ですが、電気治療で良くなるものとそうではないものがあります。

シンスプリントは後者で、電気治療では良くならない可能性の方が高いです。

一体どういうことなのか、理学療法士が解説します。

 

シンスプリントに電気治療が効果的と考えられていた理由

シンスプリントに対して、電気治療が効果的であると考えられている理由にはどういったものがあるでしょうか。

そもそもシンスプリントとはどういったものを指すのかから解説していきます。

 

そもそもシンスプリントとは?

シンスプリントとは、すねの骨(脛骨けいこつ)の周りを覆っている骨膜こつまくが炎症を起こすことで痛みが出ることを指します。

特徴としては、運動時や運動後にすねの内側中央から下にかけて、ズキズキとした痛みが生じます。

また、ひどい場合は疲労骨折にもなりかねないので注意が必要です。

疲労骨折とは、1回の外傷で起こる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびが入ったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態を言います。

参照元:公益社団法人 日本整形外科学会

初めは炎症による痛みが大きいですが、慢性化し進行すると、疲労骨折になってしまう恐れもあるので、痛みが長引く場合は注意が必要です。

 

なぜ、電気治療が効果的?

電気治療が効果的な理由としては、電気の力で筋肉がほぐれたり活性化するからと思う方が多いかもしれません。

ですが、実際は電気治療で筋肉はそこまでほぐれません。

本当に電気治療で筋肉がほぐれるなら、マッサージでほぐしても同じことですが、電気治療もマッサージも結局はあまり効果的ではないことの方が多いでしょう。

下記に電気治療についてもう少し詳しく解説していきます。

 

本当に電気治療はシンスプリントに効果があるのか?

本当に電気治療が効果あるのか、そもそも電気治療とは?というところから以下の4つについて解説します。

  • そもそも電気治療とは?
  • 電気治療の効果
  • 電気治療は強くないと効果がない?
  • 長い期間やらないと効果がない?

 

そもそも電気治療とは?

人間の細胞は1つ1つが電気を帯びており、電気的な力によって脳へ指令を伝えたり、反対に脳から手足に指令が伝わったりしています。

なので、外部からの電気刺激にも敏感に反応する性質があります。

電気治療とは、そうした人間の体に元々備わっている性質を利用し、電気を身体に流すことで痛みを和らげようとする治療を指します。

電気治療はおもに以下の3つの種類があります。

  • TENS(経皮的電気刺激療法けいひてきでんきしげきりょうほう
  • EMS(神経筋電気刺激療法しんけいきんでんきしげきりょうほう
  • マイクロカレント療法

TENS(経皮的電気刺激療法)

痛みとか温度などの感覚を脳へ伝える感覚神経に対して電気刺激を与えるというものです。

低周波治療と言う場合は、一般的にはこのTENSを指します。

痛みを感じない程度の電気を流し、痛みを和らげたり筋肉の緊張を和らげたりすることで、痛みやコリを和らげます。

EMS(神経筋電気刺激療法)

TENSとは違って、EMSは脳からの筋肉を動かす指令を伝える運動神経に対して電気刺激を与えるというものです。

運動神経に電気を流して筋肉を収縮させることで、筋力トレーニングとして用いられます。

医療現場では、脳卒中で半身不随はんしんふずいとなってしまった方を対象に、動きにくい筋肉に対して電気を流して筋肉の収縮をサポートする目的でも用いられています。

マイクロカレント療法

人間の身体に元々流れている電流を生体電流と言いますが、それに似た微弱な電流を流して治療するものです。

ケガや痛みの回復に効果的とされています。

 

電気治療の効果

一般的な電気治療の効果としては以下のようなものが挙げられます。

  • 疲労回復
  • 血流改善
  • 痛みの緩和
  • 筋肉の萎縮いしゅくの予防

神経や筋肉に電気を流すことで、血流を良くしたり、老廃物や疲労物質の排出による疲労の回復効果も期待できます。

神経に直接作用できるので、痛みを伝えている神経に対して電気で刺激することで、痛みの伝達を弱めることが期待できます。

筋肉自体に電気を流すと筋肉が収縮するので、筋肉が弱るのを予防することも期待できます。

 

電気治療は強くないと効果がない?

強く電気を流せばそれだけ効果も高いような気がしますが、決してそうではありません。

電気治療の種類で解説した通り、マイクロカレント療法なんかは人間の身体に元々流れているような微弱な電流で治療するものですが、それでも効果が期待できます。

もし、電流が強くないと効果がないのなら、マイクロカレント療法のような微弱な刺激では効果はないはずです。

なので、TENSもEMSも同様に、強ければ強いほど良いわけではありません。

 

長い期間やらないと効果がない?

痛みや筋肉のコリの程度は人によって様々です。

なので、電気療法による効果も人によってばらつきがあります。

これは実際にやってみないと分からない部分ではありますが、必ずしも長期間やらなくてはいけないわけではありません。

1回ではっきりと効果を自覚できる方もいれば、何回かやっているうちに効果を実感してくる方もおられます。

また、効果の持続時間も人によって異なるので、すぐに効果が薄れてしまう場合は継続して実施しないといけませんし、1回で長く効果が続くなら短い期間で済む場合もあります。

 

電気治療がシンスプリントに効果ないことが多い理由

ここまで電気治療の種類や効果を述べてきましたが、シンスプリントに対しては電気治療の効果はないことが多いです。

その理由は以下の2つです。

  • そこまで筋肉がほぐれないから
  • もっと根本的な問題があることが多いから

それぞれについて解説します。

 

そこまで筋肉がほぐれないから

電気療法は大きく分けると、神経に作用するものと筋肉自体に作用するものに分けられます。

特に神経に作用するTENSなどは、神経に電流を流して痛みの信号を弱めるというものなので、筋肉自体がほぐれるかというとそうではありません。

多少は筋肉もほぐれるかもしれませんが、筋肉をほぐすことが目的ではないので、効果は薄いでしょう。

筋肉自体に作用するEMSも筋肉をほぐすのが目的ではなく、筋肉を収縮させることで筋肉が弱らないようにしたり、緊張を和らげるものです。

筋肉を収縮させるので、TENSよりはほぐれたような感覚も得られるかもしれませんが、コリを狙ってそこをほぐすようなことはできません。

なので、電気療法では実際はそこまで筋肉がほぐれるということはありません。

 

もっと根本的な問題があることが多いから

そもそも、電気療法は痛みが出現した後に痛みに対して治療するというものです。

なので、言ってみれば湿布のようなもので、痛いからそれを和らげるために行う対症療法です。

もちろん、効果的に用いれば用途は幅広いですが、シンスプリントのような慢性的な症状にはもっと根本的な問題の方が大きいです。

たとえば、痛みがあるすねの内側の筋肉に対して電気療法を行なったとします。

電気療法によって、一時的に筋肉の緊張や痛みが和らいだとしても、そもそもが繰り返しすねに負担が加わったことが原因なので、負担が加わってしまう原因を何とかしないと再発してしまいます。

電気療法で痛みを和らげつつ、痛みを起こしてしまうくらい負担がかかってしまう原因に対してもアプローチしていくのなら、電気療法は効果的な治療となるでしょう。

 

シンスプリントは電気治療以外の治療が効果的

痛みを和らげるために電気療法を用いるのは良いですが、根本的に改善するなら電気療法以外の治療が効果的な場合が多いです。

ここでは以下の4つについて解説します。

  • マッサージ
  • ストレッチ
  • 体の使い方の修正
  • 運動環境の改善

 

マッサージ

筋肉が硬いことが原因の場合は、硬くなった筋肉に対してストレッチやマッサージが有効です。

特に硬くなりやすいのは、すねの内側で奥の方に位置する後脛骨筋こうけいこつきんという筋肉です。

マッサージの方法としては、すねの内側で脛骨とふくらはぎの筋肉の間に指を当て、膝下からアキレス腱辺りまで満遍なくほぐしましょう。

押すと結構痛い場所ではありますが、痛すぎず少し気持ちの良い程度で、円を描くようにほぐしましょう。

 

ストレッチ

マッサージだけではなく、ストレッチも硬くなった筋肉には効果的です。

同じく後脛骨筋に対してストレッチする方法を紹介します。

  1. 壁に向かって立ち、両手を壁につける
  2. 足を前後に広げ、後ろ足のふくらはぎがよく伸びる位置に調整する
  3. 後ろ足の膝を軽く曲げ、ふくらはぎを伸ばす
  4. そのまま10〜20秒ストレッチする

膝を伸ばした状態でふくらはぎを伸ばすと、表面の腓腹筋ひふくきんという筋肉が伸ばされやすく、後脛骨筋はあまり伸ばされません。

膝を曲げることによって、腓腹筋はゆるむので、後脛骨筋をよく伸ばすことができます。

 

体の使い方の修正

体の使い方は非常に重要で、同じ運動をしていても痛みが出る人とそうでない人は体の使い方が違います。

痛みが出にくい人は、体の左右や足首や膝、股関節などそれぞれを偏りなく上手く使って走ったり跳んだりすることができます。

たとえば、ジャンプする際に膝の裏側の筋肉が硬く、膝が完全に伸びきらずに曲がってしまっている場合。

ジャンプする際には、股関節や膝を深く曲げた状態から真っ直ぐに伸ばしますが、膝が完全に伸びないと、地面を蹴った力が上手く伝わらず高くジャンプできません。

なので、膝が伸びきらない分をつま先や指先で補って強く蹴り出す必要があります。

つま先や指先で蹴る動きはふくらはぎの筋肉が担っているので、ジャンプ動作を繰り返すことで、スネの内側には負担がかかってしまいます。

股関節や膝が硬くなかったとしても、動き方のくせで股関節や膝をあまり使わずに走ったり跳んだりすると、それも負担がかかる原因になります。

走ったり跳んだりする際に、股関節や膝がしっかりと伸びて、つま先や指ばかりに力が入っていないかを確認してみましょう。

 

運動環境の改善

筋肉の硬さだけではなく、硬いグラウンドや路面で運動を繰り返していると、体にかかる負担は大きくなります。

環境を変えられるのであれば、芝生や陸上競技場のトラックのようにある程度クッション性のある地面で運動することが望ましいでしょう。

環境を変えることが難しくても、クッション性のあるシューズにすることで負担を和らげることができます。

また、シューズのかかとや底がすり減っているのであれば交換することも検討しましょう。

 

まとめ

電気治療ではシンスプリントは良くならない可能性が高いことを解説しました。

電気治療自体が悪いわけではなく、痛みを良くするために電気治療をしているだけではあまり効果的ではありません。

シンスプリントは慢性的な症状なので、痛みを良くしたいなら、動き方や運動の環境を変えるなど、痛みの根本的な原因を探ってみましょう。

 


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ABOUT US
木城 拓也
理学療法士の国家資格を取得後、都内のスポーツ整形外科クリニックで医師と連携しつつプロスポーツ選手や箱根駅伝選手などを担当し、技術を磨いてきました。 その過程でイタリアの医師が考案した国際コースである『Fascial manipulation(筋膜マニピュレーション)』のコースを修了しています。 筋膜を通じて痛みに悩まされている人を救いたいです。
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