「シンスプリント」はランニングやサッカー、バスケットボールなどのスポーツによって生じるスポーツ障害の一つです。
耳にしたことがある人も多いと思いますが、スポーツを頑張る成長期の中高生や、過酷な状況下でトレーニングを続けるスポーツ選手に多い疾患で、足の骨膜の炎症によって生じます。
運動した後に生じる脛の内側の痛みに悩まされている場合は、シンスプリントになっている可能性が高いです。
軽症の場合は知らない間に自然に治ってしまう人もいますが、重症化してしまうと「疲労骨折」などの大きな障害につながってしまうこともあります。
本記事では、致命傷となる前に重症化してしまう人の症状や特徴についてお伝えしていきます。
自分が感じている痛みが重症化する可能性があるかどうか、確認しながら読み進めてみましょう。
すでに痛みに悩まされている人は、先にこちらの対処法を参照し、後ほどゆっくりと内容を理解していきましょう。
目次
そもそもシンスプリントとは?
シンスプリントは、別名で脛骨過労性骨膜炎と呼ばれる骨膜の炎症です。
おもにランニングやスポーツなどのやり過ぎによって、脛の骨(脛骨)に付着する骨膜の付着部に負担が掛かり炎症を起こしてしまいます。
その結果運動直後に脛の内側で下方3分の1あたりにうずくような痛みを生じます。
特に、激しい運動や固い地面での運動、急な発進・ブレーキを必要とするスポーツ(バスケットボールやサッカーなど)を行うことによって生じます。
軽症の場合は少し安静にすることで、治ってしまうことが多いですが、重症化してしまうと完治するのに何ヵ月も掛かってしまうこともあります。
シンスプリントに多い5つの原因
シンスプリントの直接の原因となるのは過労による負担のかかり過ぎですが、その原因は以下に示すように実に様々です。
- 運動量の増加、運動のやり過ぎ
- 筋肉が固い
- 硬い地面や体育館で運動をしている
- 扁平足
- 筋力が弱い
そこまで無理をしていないのにいつまでも続く痛みに悩まされている場合は、周辺環境や構造上の問題が関係しているかもしれません。
1.運動量の増加、運動のやり過ぎ
原因の中でも特に多くみられるのが運動量が急に増加してしまったことや、運動のやり過ぎによるものです。
特に成長期の中高生に多くみられるのが、部活動をやり始めたことによって急に運動をするようになり痛みに繋がってしまうケースです。
中でも、新入部員やシーズンの初めなどに特に多く発症します。
バスケットボールやサッカーなど、ジャンプやダッシュ、ブレーキの動作を繰り返すスポーツで痛みを生じてしまうのは、脛の内側や後ろ側にある筋肉や筋膜が繰り返し引っ張られることで骨に付着する骨膜にまでストレスが掛かってしまう為です。
朝から放課後、土日まで休みなく部活動に励んだ結果、休む間もなく働く足に負担が掛かり過ぎて痛みを生じてしまうことが少なくありません。
2.筋肉が硬い
特にふくらはぎの筋肉や脛の筋肉の柔軟性が低下して硬くなってしまうと、骨の付着部である骨膜が引っ張られてしまいストレスが掛かかりやすくなってしまいます。
久々に運動をする時などは、特にしっかりとストレッチをしない状態で急激な運動を行ってしまうと骨膜の炎症や痛みに繋がってしまいます。
また、筋肉が硬くなるとその分関節の動きが制限されてしまいます。
その状態で運動を繰り返してしまうと、着地の際や蹴り出す際に足に掛かる衝撃がうまく吸収されずに炎症や痛みに繋がってしまいます。
3.硬い地面や体育館で運動をしている
常に運動をしているのに痛みが生じてしまう場合や、成人に多いのが環境面の問題です。
アスファルトや体育館などの硬い地面での繰り返しの運動では、土や運動上に比べて着地や蹴り出す際に足に加わる衝撃が強くなってしまいます。
また、それ以外にも履き古したシューズを使い続けることでクッション機能が低下して痛みに繋がってしまうケースなども原因の一つです。
4.扁平足(へんぺいそく)
もともと人の足の裏には、衝撃を吸収する為の以下の3つのアーチがあります。
- 足の外側にある縦のアーチ
- 足の内側(土踏まず)にある縦のアーチ
- 足指の付け根にある横のアーチ
この3つのアーチによって足裏に加わる衝撃を和らげたり、足を蹴り出す際に力を発揮することができます。
この3つのアーチは足裏や足指に繋がる筋肉によって構成されますが、何らかの原因でこのアーチが崩れてしまうと「扁平足」となってしまいます。(下記の引用を参照。)
足にはアーチ構造があり、効率よく体重をささえています。内側のくるぶしの下に、アーチをつり上げる働きをする後脛骨筋の腱が通っています。年齢による腱の変性や体重の負荷によって、この腱が断裂すればアーチは低下します。成人期の扁平足は女性に多く発生します。
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■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
扁平足となった状態では、足に加わる衝撃が上手く回避できずにそのまま脛までストレスが加わってしまいます。
これが、シンスプリントに繋がる炎症や痛みとなってしまいます。
5.筋力が弱い
中高生などの学生では、脛やふくらはぎの筋肉が未発達で、蹴り出す際や着地の際の衝撃吸収が上手く出来なくなってしまうケースが多く見られます。
このような状態で過酷な練習を続けてしまうと、衝撃に耐えられなくなってしまい炎症や痛みに繋がってしまいます。
シンスプリントには重症型がある
多くの中高生やスポーツ選手が経験する脛の痛みですが、そのほとんどは少し安静にすることで自然と痛みが消失します。
しかし重症化してしまうと、痛みが引くまでに数ヵ月〜数年も掛かってしまうケースがあります。
この重症型には、その構造的な部分で分類分けされておりそれぞれの症状にもある程度の共通の特徴が見られます。
「ただの疲れかな?」と思って放っておいてしまうことで重症型に移行してしまう可能性もあるので、自分の症状と見比べながら正しく判断ができるようにしましょう。
1.シンスプリントの重症度分類
シンスプリントは痛みが出現するタイミングやその程度によって以下の4つに重症度を分類します。
- grade Ⅰ・・・運動後にのみ疼痛(痛み)がある。
- grade Ⅱ・・・運動前後に疼痛があるがスポーツ活動に支障はない。
- grade Ⅲ・・・運動前中後に疼痛がありスポーツ活動に支障をきたす。
- grade Ⅳ・・・疼痛が強くスポーツ活動は不可能
上記の分類の中でもgradeⅢ以上となる場合は、運動を一時的に中断する必要があると言われています。
2.シンスプリントが重症な人の症状
シンスプリントが重症な人にはある程度同じような症状が現れます。
運動の直後や運動時に一時的に痛みが生じる程度であれば、少しの安静で痛みが消えてしまいます。
しかし、次第に痛みがひどくなり、安静にしていても持続する痛みを感じたり、痛みによって歩くのが困難となってしまうなどの症状が見られた場合は重症化を疑います。
また、重症化するケースでもこのような症状がいきなり出現するわけではなく、流れとして以下の経過をたどるケースが多く見られます。
- 運動後にすねの内側で下から1/3あたりにうずくような痛み・腫れを感じる
- すねの内側でしたのあたりを押しても痛み(圧痛)を感じる
- 運動の有無に関わらず、安静にしていても痛みを感じ歩くことが困難となる
自分の痛みがどのような経過を辿っているのか、注意深く見ていくことが大切です。
3.最終的には疲労骨折になることもある
シンスプリントは骨膜の炎症が原因となって起こるものですが、これが重症化し炎症が骨膜に留まらずに骨にまで影響してしまうと、骨折に繋がってしまうことがあります。
これが、いわゆる「疲労骨折」です。
重症化して骨折してしまう前に自分自身が感じる痛みがどの程度なのか、しっかりと症状を見極めることが重要です。
シンスプリントが重症化する人に多い2つの特徴
シンスプリントが重症化してしまう人には以下の2つの特徴が見られます。
- 痛くても運動を続けている
- 完治する前に運動を再開している
上記の2つのうち一つでも心当たりがある人は要注意です。
1.痛くても運動を続けている
運動に一生懸命となってしまうと、少しの痛みでも「少し疲れただけかな?」と我慢してしまう人が少なくありません。
特に中高生の部活動では、大事な試合前の練習やレギュラー争いなどでどうしても無理をしてしまうケースが少なくありません。
しかし、無理をしてしまうと次第に痛みが強くなり、上記で述べたように重症化してしまうと運動を続けること自体が困難となってしまいます。
痛みを適切に判断し、症状に合わせた正しい対処や治療を行うことが大切です。
2.完治する前に運動を再開している
また、一度シンスプリントと診断されて痛みがある間は安静にしていたにも関わらず、少し良くなったからと言ってすぐに運動を再開してしまう人も多く見られます。
まずは、初めにシンスプリントとなってしまった原因を探り、正しい対処を取ることで再発を予防することができます。
反対に、根本的な原因を解決出来ずに、すぐに運動を再開してしまう人はいつまでもずるずると痛みに悩まされてしまいます。
ただ、闇雲に安静にするだけではなく、今まで述べてきた原因や症状の特徴から痛みの根本を理解し、これからお伝えする治療法を正しく行うことが大切です。
シンスプリントが重症化した時に行う4つの治療法
シンスプリントが重症化してしまった時の治療法は、大きく分けて4つあります。
- 安静にする
- アイシング
- 患部以外のマッサージ
- 下半身のストレッチ
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1.まずは安静にする
運動のやり過ぎが大きな原因となるので、痛みが生じている間はできる限り安静にするのが優先です。
ランニングなどの運動を初め、部活動やスポーツは一旦休止し足に掛かる負担を取り除くことが大切です。
炎症症状や痛みが落ち着いたら、徐々に段階を追って運動を再開することが再発を予防するためにも重要となってきます。
2.アイシング
安静と同時に大切となるのが患部のアイシングです。
痛みの原因となる炎症は、アイシングにより鎮静化することで痛みの軽減につながります。
その他にも、消炎鎮痛効果のある貼り薬や内服薬を併用する場合もあります。
3.患部以外のマッサージ
ふくらはぎや脛、足裏の筋肉がこわばって硬くなってしまいシンスプリントに繋がっているケースでは、足のマッサージが効果的です。
しかし、ここで一つ注意が必要なのが、マッサージをする範囲やタイミングです。
痛みを生じている患部周辺は腫れや炎症が強く、熱を帯びていることから無闇にマッサージをしてしまうと逆効果となってしまうケースがあります。
また、マッサージによって患部周辺の血流が促進された結果、炎症反応を助長してしまうケースもあります。
少し触るだけでも痛みが生じるような重症な場合は、無闇に触らないように注意が必要です。
上記以外の軽症の場合や、安静によって痛みが軽減してきた際に効果的なセルフマッサージを2つ紹介します。
脛の内側のマッサージ
脛の内側には蹴り出す際やジャンプの際に働く複数の筋肉が存在しています。
この筋肉が硬くなり柔軟性を失ってしまうことや、複数の筋肉が癒着してしまうと、シンスプリントに繋がってしまいます。
これらの筋肉の強張りをほぐし、疲れを取り除くことは痛みの軽減にもつながります。
運動の前後や、入浴の後など1日の中で時間を見つけ、脛の内側に指を押し当てた状態でゆっくりと筋肉を揉みほぐしていきましょう。
足裏のマッサージ
足裏にはアーチを形成する筋肉が多数存在します。
これらの筋肉の硬さや強張りをほぐし、適切な柔軟性を保つことは足の衝撃吸収機能を働かせるためにも重要です。
足の裏に指を押し当て、外側・内側それぞれのアーチに沿って揉み解します。
足裏のマッサージは指先で行う他にも、ゴルフボールを転がすことでも効果的に行えます。
日頃から、継続してこまめにストレッチを行うことが大切となってきます。
4.下半身のストレッチ
下半身の柔軟性を適切に保つこともまた、シンスプリントの治療の上では重要となります。
特に、痛みを生じる脛やふくらはぎの筋肉をしっかりとストレッチすることで痛みの軽減につながります。
以下で紹介する3つのストレッチを実践してみましょう。
ふくらはぎのストレッチ
ふくらはぎには蹴り出すときやジャンプをする際に必要となる筋肉が複数存在しています。
ここが硬くなってしまうと、骨膜が引っ張られてしまい炎症や痛みに繋がってしまいます。
日頃からしっかりとストレッチを行い、柔軟性を保つことが重要です。
- 両手を壁に付けて両足を前後に開く
- 後ろ足の踵は地面につけた状態で、前の膝を曲げていく
- 後ろ足のふくらはぎがしっかりと伸びていることを感じながら20〜30秒キープ
※左右それぞれ2セットずつ行う
脛の前側のストレッチ
足首の前側には、足首や足指を上に反らす筋肉が存在しており脛に繋がっています。
ここが硬くなってしまうと足首の動きが低下したり、シンスプリントに繋がる骨膜の炎症を引き起こしてしまいます。
先ほどのふくらはぎのストレッチを合わせて、継続して行うことでより効果的です。
- 両手を壁に付けて立ち、伸ばしたい方の爪先を地面につける
- そのまま足の甲を地面に押し当てるように20〜30秒ゆっくりとストレッチ
※左右それぞれ2セットずつ行う
重症化した場合の回復期間
重症化してしまった場合、回復までにどれくらい掛かるのかについては個人差もある為性格に言い切るのは困難です。
しかし、一般的な例でっは軽症であれば2週間程度の安静である程度の改善が見られますが、重症なケースは数ヵ月単位で治らないことも多々見られます。
中には半年〜数年単位で痛みに悩まされてしまうケースもあります。
慢性化してしまうと、なかなか治らずに運動が行えなくなってしまうことも少なくありません。
早く治したい場合は理学ボディにお越しください
シンスプリントが重症化すると数ヵ月単位で痛みが治らないため、なかなか運動に復帰できません。
特に学生さんは部活の期間に限りがあるため、シンスプリントが治らないと思うように練習もできませんし、どんどん周りに差を付けられてしまいます。
私も学生時代にヘルニアで長期間の離脱や最後の大会に出れないことを経験してるため、同じような思いを他の人にして欲しくないと強く感じています。
学生時代の部活は一生の思い出に残りますし、とても大切な時期です。
当店にもシンスプリントが重症化してなかなか治らない人が多く来られていますが、多くの人はその場で大幅に痛みが軽減されることが多いです。
ですので、長期間経過しても治らない場合は、当店にお越しください。
まとめ
シンスプリントは、その多くが運動のやり過ぎによって生じる過労性のスポーツ障害で骨膜の炎症によって痛みが生じてしまいます。
軽症の場合は少しの安静で痛みが改善しますが、重症化してしまうと数ヵ月〜年単位で痛みに悩まされてしまうケースもあります。
重症化してしまう前に、症状や痛みのタイミングから適切に判断し正しく対処することが早期回復の鍵となります。
セルフマッサージやストレッチも効果的ですが、なるべく早くスポーツ復帰をしたい場合などではプロの手を借りることも大切です。
痛みと相談しながら、適切な治療法を選んでいきましょう。