運動前後にすねが痛くなるシンスプリント。
痛みが出始めた時、その対処法としてただ闇雲にストレッチをしてしまっていませんか?
たしかに、軽症の場合はストレッチや軽い筋トレ等で自然と治ってしまうことがほとんどです。
また、多少の痛みであればセルフケアをしながら運動を続ける人が多いのが現状です。
しかし、良かれと思って行うストレッチが逆効果となってしまう危険なケースがあるのをご存知でしょうか?
最初に判断を見誤ってしまうと、疲労骨折などの重症例に繋がってしまうケースがあるんです。
本記事では、シンスプリントの痛みに悩まされている人に向けて、ストレッチの有効性の判断の仕方や正しい方法を解説していきます。
成長期の中高生やアスリートの方など、これから運動を頑張りたい人はしっかりと理解していきましょう。
目次
シンスプリントとは
シンスプリントは、別名で脛骨過労性骨膜炎と呼ばれる骨膜の炎症です。
原因は様々ですが、主にランニングやスポーツのやり過ぎによって、脛の骨(脛骨)に付着する骨膜の付着部に負担が掛かり炎症を起こしてしまいます。
特に、激しい運動を行うことや、固い地面などの衝撃を受けやすい場所での運動、急な発進・ブレーキを必要とするスポーツ(バスケットボールやサッカーなど)を行うことによって頻発します。
軽症の場合は少し安静にすることで治ってしまいますが、重症化してしまうと完治するのに何ヶ月〜数年も掛かってしまうことがあります。
その時の痛みの程度や種類といった病態によって、適切な対処をすることが重症化への予防には大切です。
シンスプリントでストレッチが効果的ではないケース
先ほどもお伝えしたように、シンスプリントは重症化してしまうと痛みが引くまでに数ヶ月〜数年も掛かってしまうケースに繋がってしまいます。
ただの疲れかな?と思って行う自己流のストレッチによって、大好きなスポーツが続けられなくなってしまう危険性があるんです。
ストレッチが効果的ではないケースの具体例を挙げると、以下の4つのケースがあります。
- 疲労骨折しているケース
- 安静にしていても痛みや腫れがあるケース
- ストレッチを続けても全く効果がないケース
- ストレッチ後に痛みが悪化するケース
それぞれの特徴と自分の症状と見比べながら正しく判断ができるようにしましょう。
疲労骨折しているケース
シンスプリントは骨膜の炎症が原因となって起こるものですが、これが重症化すると炎症が骨膜に留まらずに骨にまで影響してしまいます。
これが、いわゆる「疲労骨折」に繋がってしまうケースです。
症状
好発するのは、第2中足骨で運動時に足の痛みを訴えます。
両下腿骨(脛骨や腓骨)、肋骨、足関節内果、尺骨などにもおこりその部位に疼痛を訴えることがあります。腰椎を除いた好発部位
原因と病態
疲労骨折とは、1回の大きな外傷でおこる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびがはいったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態をいいます。
丈夫な針金でも繰り返し折り曲げ続けると折損してしまうのと似ています。スポーツ選手では短期的に集中的なトレーニングを行ったときに生じることが多いのも特徴です。
選手側の要因としては、筋力不足、アンバランスな筋力、未熟な技術、体の柔軟性不足などが考えられ、環境側の要因としては、オーバートレーニング、選手の体力や技術に合わない練習、不適切なシューズ、練習場が固すぎたり、柔らかすぎるなどが考えられます。■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
安静にしていても痛みや腫れがあるケース
続いて、運動の有無に関わらず安静にしている状態から痛みや腫れが生じるケースです。
この場合は、筋肉や筋膜・骨膜に炎症症状が生じてしまっている可能性が高いので、無理なストレッチは禁物です。
良かれと思って行うストレッチが、反対に炎症症状を強めてしまい痛みや腫れが悪化してしまうことがあります。
上記の場合は、まずは出来るだけ負担のかかる運動は一時的にお休みし、安静にすることが大切です。
加えて、痛みや腫れが強い場合は氷嚢や氷水を使ったアイシングを行うことでより痛みの軽減に効果的となります。
ストレッチを続けても全く効果がないケース
また、ストレッチを毎日続けても痛みが全く改善しない場合も同様です。
シンスプリントとなる原因が、筋肉の硬さに問題があるケースにはストレッチが効果的となりますが、それ以外に問題がある場合はいくらストレッチを念入りに行って痛みの改善に至りません。
痛みの原因となる根本を見誤ってしまうと、回復はどんどん遅れて重症化に繋がってしまいます。
この場合は、痛みの原因がどこにあるのかをしっかりと理解することが最優先となります。
(※シンスプリントの痛みの原因についてはこちらをご参照ください。)
ストレッチ後に痛みが悪化するケース
ストレッチをする前と比べ、ストレッチの後に痛みが悪化してしまうケースにも注意が必要です。
そもそもストレッチは意図的に関節や筋肉を伸ばし、その柔軟性を高めたり運動前に体を温めることを目的として行います。
しかし、ストレッチの後に痛みが悪化してしまう場合には、ストレッチによって無理に筋肉が引っ張られ、逆に患部への刺激を強めてしまうことが悪影響を及ぼしている可能性が考えられます。
この場合、痛みがあるのに無理にストレッチを行ってしまうと、どんどん痛みが悪化してしまうので、痛みを感じている部分は安静にすることが大切です。
シンスプリントでストレッチが効果的なケース
では、実際にストレッチが効果的となるケースはどのようなものがあるのでしょうか。
それは主に以下の2つに分けられます。
- ストレッチをすると傷みが軽減するケース
- ストレッチをすると痛みが出にくくなるケース
それぞれについて詳しくみていきましょう。
ストレッチをすると痛みが軽減するケース
まずは、痛みが出てしまった際に軽めのストレッチをすることで痛みが軽減するケースです。
この場合、運動によって筋肉が緊張状態となり凝り固まってしまったことが痛みを引き起こす原因となっています。
そのため、ストレッチにより筋肉を適度に緩めることが痛みを和らげるには効果的となります。
適度に筋肉や関節を伸ばし、血行が良くなると筋肉に溜まった乳酸が排出されやすくなり、反対に必要な酸素や栄養が届きやすくなります。
その結果、痛みが徐々に緩和されていきます。
ここで注意したいのが、上記でも伝えた重症例に見られる炎症や筋肉が損傷して強い痛みや腫れが生じている場合は逆効果となることです。
痛みの状態をしっかりと見極め、ストレッチが有効かどうかを判断できるようにしましょう。
ストレッチをすると痛みが出にくくなるケース
運動前にストレッチをすると痛みが出にくくなるケースも、ストレッチが効果的なケースです。
もともと体が硬いなど筋肉の柔軟性が低い人はケガをしやすいとよく言われますが、これはシンスプリントの場合でも同じです。
何もしない状態で、いきなり激しい運動を行うと、すね周りの筋肉が上手く伸び縮み出来ずに筋肉が微小に損傷してしまったり、骨の付着部である骨膜が引っ張られて痛みに繋がってしまいます。
また、筋肉が硬くなるとその分関節の動きも制限されてしまうことで、関節にも負担が掛かりやすくなってしまいます。
ストレッチを運動前の準備運動として行うことで、事前に適度な刺激が加わりその後の運動時もしっかりと伸び縮みしやすくなるため効果的と言えます。
シンスプリントに効果的なストレッチを紹介
では、実際にシンスプリントに効果的なストレッチはどんなものがあるでしょうか?
ここでは、足の筋肉の種類別に以下の5つのストレッチ方法をお伝えしていきます。
- 前脛骨筋のストレッチ
- ヒラメ筋のストレッチ
- 後脛骨筋のストレッチ
- 長趾屈筋のストレッチ
- 長母趾屈筋のストレッチ
前脛骨筋のストレッチ
前脛骨筋は、足首の前側に位置し、歩く時や走る時に足首や足指を上に持ち上げたり上に反らす働きを担っています。
ここが硬くなってしまうと足首の動きが低下したり、シンスプリントに繋がる骨膜の炎症を引き起こしてしまいます。
立った状態で行えるストレッチなので、運動前後だけではなく仕事や家事の合間などスキマ時間に行ってみましょう。
- 両手を壁に付けて立ち、伸ばしたい方の爪先を地面につける
- そのまま足の甲を地面に押し当てるように20〜30秒キープ
※左右それぞれ2セットずつ行う
ヒラメ筋のストレッチ
ヒラメ筋は、ふくらはぎの深層に位置し、ジャンプや走る際の蹴り出し動作に深く関わっています。
ここが硬くなってしまうことも、骨膜が引っ張られてしまい炎症や痛みに繋がってしまいます。
日頃からしっかりとストレッチを行い、柔軟性を保つことが重要です。
- 両手を壁に付けて両足を前後に開く
- 後ろ足の踵は地面につけた状態で、前の膝を曲げていく
- 後ろ足のふくらはぎがしっかりと伸びていることを感じながら20〜30秒キープ
※左右それぞれ2セットずつ行う
後脛骨筋のストレッチ
後脛骨筋は、すねの内側で深層に位置し、足首の安定性を保つ働きを担っています。
また、足裏のアーチを構成する部分でもあり、ジャンプやランニングでの衝撃吸収に働くため、スポーツをする人は特に念入りに行いましょう。
座って手軽に行える方法をお伝えしますので、運動前後など足をよく使う際にはこまめに行い、習慣にしていくことが大切です。
- 体育座りになり伸ばしたい方の爪先をつかむ
- 足首を反らせるように爪先を上に持ち上げ、ゆっくりとふくらはぎを伸ばす
- そのまま足先を外側・斜め後方に引っ張る
- ふくらはぎの内側が伸びていることを感じながら20〜30秒キープ
※左右それぞれ2セットずつ行う
長趾屈筋のストレッチ
長趾屈筋は、ふくらはぎの深層に位置する筋肉で、足ゆびを曲げたり足首の安定性を保つ働きを担っています。
また、この筋肉も足裏のアーチに深く関わっており、うまく伸び縮み出来なくなると足の衝撃吸収に不具合が生じ、痛みに繋がってしまいます。
後脛骨筋のストレッチと合わせて、日頃から行っていきましょう。
- 伸ばしたい足を台に乗せ、足先を掴む
- 足先を反らせるように足ゆびを上に持ち上げる
- そのまま膝を前に移動させ、ふくらはぎの後〜足裏が伸びていることを感じながら20〜30秒キープ
※左右それぞれ2セットずつ行う
長母趾屈筋のストレッチ
長母趾屈筋は、ふくらはぎの深層に位置し足の親指を曲げたり、足裏のアーチの形成に深く関わります。
また、スポーツでの切り返し動作など、足の親指で強く踏ん張る際にも働きます。
長趾屈筋や後脛骨筋と同様に、骨に近い部分に位置する為、柔軟性が低下し負担が掛かかると痛みにつながりやすくなってしまいます。
日頃からしっかりとストレッチを行いましょう。
- 伸ばしたい足を台に乗せ、足の親指を掴む
- 足先を反らせるように親指を上に持ち上げる
- そのまま膝を前に移動させ、ふくらはぎの後〜足裏が伸びていることを感じながら20〜30秒キープ
※左右それぞれ2セットずつ行う
ストレッチのポイントや注意点
ストレッチは、ただ闇雲に伸ばせば良いわけではありません。
方法を誤ってしまったり、無理に伸ばしすぎると逆効果となり痛みを悪化させてしまうこともあります。
より効果的にストレッチを行うポイントを5つ紹介します。
実践する際は、以下のポイントをしっかりとチェックしながら行いましょう。
- 息を止めない
- 勢いをつけない
- 体が冷えている状態でやらない
- ストレッチの時間
- ストレッチの頻度
息を止めない
ストレッチはゆったりとリラックスした状態で行うことが基本となるため息を止めずに行うことが重要です。
一生懸命になるあまり、息を止めて行ってしまうと筋肉が緊張状態となり、うまく伸ばせなくなってしまいます。
伸ばしたい筋肉を意識しながら、「フー」と息を吐きながら行ってみましょう。
勢いをつけない
ストレッチを頑張る人の中には、勢いをつけて伸ばしてしまう人もいますが、これはNGです。
反動を付けて行うと、必要以上に筋肉が伸ばされてしまい、それを察知した筋肉は反射的に緊張状態となってしまいます。
それだけでは無く、勢いを付けて無理に伸ばしてしまうと伸ばし過ぎて筋肉や腱を痛めてしまうこともあります。
ストレッチを行う際は、勢いや反動を付けずに自分が気持ちよく伸ばせる範囲で行うことが重要です。
体が冷えてる状態でやらない
寝起きやしばらく動いていないようなガチガチな状態でストレッチを行うと、うまく体が動かないことや痛みに繋がってしまうことがあります。
そのため、ストレッチは入浴後など適度に体を温めた後に行うのが効果的です。
体が温まると、血流が促進され筋肉も緊張がほどけて伸びやすくなります。
それだけでなく疲れも取れやすくなり、リラックス効果にも繋がります。
ストレッチの時間
ストレッチの効果的な時間は約20〜30秒程度と言われています。
長い時間行うほど良いと感じてしまう人もいるかもしれませんが、ある研究結果では20〜30秒のストレッチも60秒以上のストレッチも効果は同じと言われています。
その理由としては、筋肉は伸ばされるとゴムのように元に戻ろうとする働きがあるということが関係してきます。
しかし、この元に戻ろうとする働きは、ストレッチを何回も反復することで徐々に緩和されていきます。
一度の長い時間のストレッチよりも、細かい時間で何度も引き伸ばされる方が筋肉自体の柔軟性がアップしていくんです。
そのため、60秒間といった長い時間行うよりも20〜30秒を2〜3セットに分けて行う方が効果的と言えわれています。
ストレッチの頻度
先ほどのストレッチの時間でもお伝えしたように、ストレッチは単発で長い時間行うよりも短い時間で反復する方が効果的です。
そのため、ストレッチの頻度も多い方が、効果はより得られやすくなります。
実際の頻度としては、運動前後と入浴後など体が温まった状態で毎日欠かさず行うことが効果的です。
このように日々の積み重ねが、柔軟でケガをしにくい体作りには最も重要となります。
まとめ
シンスプリントの痛みには、ストレッチが効果的なケースと、反対にストレッチが逆効果となってしまう危険なケースがありました。
2つのケースの違いをしっかりと理解し、適切な対処を取ることが早期回復には重要です。
また、ストレッチを行う際はただ闇雲に行うのではなく、しっかりとポイントを抑えることでその効果はより増大します。
本記事で紹介したストレッチを参考に、日々の習慣にしていきましょう。