走るとすねの内側が痛いのをほったらかしにしている方、ちょっと待ってください。
すねの内側が痛いのはシンスプリントと呼ばれ、陸上競技の長距離やサッカーなど走ることの多い競技で起こりやすい症状です。
シンスプリントは慢性化しやすく、痛いのを我慢してほったらかしにするのはお勧めしません。
そこで、今回はシンスプリントを4つの症状に分け、症状別に原因と対処法を解説しますので、ご自身がどの症状に当てはまるのか考えながら読み進めてください。
目次
シンスプリントとは
シンスプリントとは、上述したように長距離を走る競技で起こりやすいすねの内側に痛みが出現する症状を指します。
中学生や高校生、競技を始めたての新人選手に多く見られる症状だと言われています。
何故痛みが起こるかと言うと、すねの骨である脛骨の周りを覆う骨膜が炎症を起こすことで痛くなります。
シンスプリントの症状
症状としては、運動時や運動後にすねの内側中央から下1/3にかけて縦長にズキズキとした痛みが起こることが特徴です。
別名、脛骨過労性骨膜炎とも呼ばれ、走る・跳ぶなどの激しい運動を繰り返し、足の使い過ぎが原因とされています。
使い過ぎが原因なので、走る距離や負荷を減らすことで軽快することもありますが、競技を再開すると再発を繰り返すことも多いです。
また、痛い部位をかばうことで、膝など別の部位の痛みにつながることもあります。
なので、痛い場合は我慢して続けるのではなく、根本の原因を何とかしないといけません。
シンスプリントの主な症状としては、以下の2つです。
- すねの内側の痛み
- 炎症
すねの内側の痛み
原因は上述した通り、使いすぎです。
具体的には、長趾屈筋と呼ばれる、足の親指以外の指を曲げる働きを持つ筋肉が主な原因です。
走ったり跳んだりする際、足の指は地面を強く蹴るために大きく反ります。
長趾屈筋は指を曲げる働きがあるので、指が反ると強く伸ばされます。
特に走ったり跳んだりする際には強い力が加わるので、長趾屈筋には大きな負担がかかっていることが考えられます。
この長趾屈筋はすねの内側に付着するため、強く伸ばされることですねの内側にも強く引っ張る力が加わります。
これが繰り返されることが、シンスプリントにおけるすねの内側の痛みの原因です。
炎症
すねの内側の痛みで解説した長趾屈筋による痛みとは別に、炎症による痛みがあります。
長趾屈筋による痛みは、筋肉や腱の損傷やすねの骨を覆う骨膜への強い負担による痛みです。
炎症による痛みは、すねの内側で長趾屈筋が強く伸ばされたり、周囲の組織とこすれて摩擦が起こることが原因で起こる痛みです。
炎症が起こると、痛みを起こす物質がそこで作られるので痛みを感じるようになります。
上記との違いは、長趾屈筋が繰り返し伸ばされることによる物理的な痛みと炎症による化学物質による痛みです。
シンスプリントの症状別対処法① | 痛みの部位が腫れているケース
ここからはシンスプリントにおける症状別に分けて解説していきます。
まずは、痛みの部位が腫れている場合に考えられること、原因、対処法を解説します。
考えられること
痛い部位が腫れている場合、炎症している可能性が考えられます。
炎症には、発赤、熱感、腫脹、痛みの4つの徴候があります。
腫れを伴い、かつ、熱っぽい感じや赤みがかっている、痛みがあれば、炎症が起こっている可能性が高いです。
原因
炎症が起こる原因としては、その部位の使いすぎや運動のしすぎです。
ここまでで解説した通り、長い距離を走ったり跳んだりすることを繰り返すことで、すねの内側に過剰な負担がかかるからです。
具体的には、すねの内側にはつま先を倒す筋肉であるヒラメ筋、後脛骨筋、足の指を曲げる筋肉である長趾屈筋、長母趾屈筋が付着しています。
つま先や足の指を動かすことで、これらの筋肉が縮んだり伸ばされたりします。
それによって、脛骨の骨膜を引っ張る力が加わり、繰り返し骨膜が引っ張られることで摩擦や小さな傷を作ります。
それが炎症の原因になります。
走ったり跳んだりする時には、つま先や足の指をよく使うので、それがすねの内側に負担をかけてしまうということですね。
対処法
安静
炎症が起きている場合は、一旦安静にすることが大切です。
炎症が起きているのに、走ったり跳んだりを繰り返していてはいつまで経っても炎症は治まりません。
安静にして少し良くなったからと、すぐに競技を再開して再発していては意味がないですが、安静にすることも重要な対処法の1つです。
アイシング
アイシングは冷やすという意味ですが、炎症を抑えるという意味では有効な対処法です。
方法としては、ビニール袋に氷を入れ、患部を10~20分程度冷やしていると感覚がなくなってきますので、その時点で冷やすのを止めて大丈夫です。
シンスプリントの症状別対処法② | 痛みの部位を押すと痛いケース
ここでは、痛む部位を押すと痛みが出る場合に考えられること、原因、対処法について解説します。
考えられること
押すと痛い場合は、1つ目の症状で解説した炎症に加えて、筋肉自体の痛みや疲労骨折の可能性が考えられます。
筋肉の痛みの原因も走ったり跳ぶことを繰り返すことによる、使いすぎが原因となります。
筋肉を使いすぎると、筋肉が緊張して硬くなり、筋肉内にある血管が圧迫されます。
すると、血液の流れが悪くなり、痛みを起こすブラジキニンやプロスタグランジンと呼ばれる物質が作られ、それが痛みを起こす原因となります。
また、筋肉や筋肉の周りを覆う筋膜には、痛みを感知するセンサーのようなものがあり、筋肉の緊張でセンサーが刺激されることでも痛みを感じます。
そして、特に注意しなくてはいけないのが疲労骨折です。
疲労骨折とは、1回の外傷で起こる通常の骨折とは異なり、骨の同じ部位に繰り返し加わる小さな力によって、骨にひびが入ったり、ひびが進んで完全な骨折に至った状態を言います。
参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
シンスプリントでも疲労骨折でも、どちらも押して痛いことは考えられるので、痛みが強く経過が長い場合は整形外科を受診し、正しく診断してもらうことをお勧めします。
原因
原因としては、筋肉の使いすぎに加えて、筋肉の硬さが考えられます。
例えば、たわんで伸びる余裕があるゴムとそれ以上伸びないくらい伸びきったゴムをイメージしてください。
たわんでいるゴムは伸ばしてもある程度は余裕があります。
ですが、伸びきったゴムはそれ以上伸びる余裕がないので、伸ばすと持っている手が引っ張られますよね。
筋肉も硬くなっていると、伸びる余裕がないので、関節を動かすと骨を強く引っ張ってしまいます。
それが筋肉自体の痛みや疲労骨折につながるのです。
対処法
筋肉が硬いことが原因の場合は、硬くなった筋肉に対してストレッチやマッサージが有効です。
運動後は筋肉を使った後なので、筋肉が緊張していることが予測されます。
それに対してストレッチすることは怪我の予防に効果的です。
ただ、運動前にストレッチをすることは運動のパフォーマンスを低下させてしまう恐れがあります。
なので、運動前にストレッチをする場合は、筋肉を伸ばして10~30秒静止して保持する「静的ストレッチ」を実施後、筋肉の伸びを感じる快適な範囲の動きの中で伸ばす「動的ストレッチ」を実施するのが効果的とされています。
1つ目のケースで解説した、安静やアイシングも組み合わせながら行うのが好ましいでしょう。
シンスプリントの症状別対処法③ | 走る動作やジャンプ動作で痛いケース
ここでは、走ったり跳んだりする動作で痛い場合に考えられること、原因、対処法について解説します。
考えられること
走ったり跳んだりする動作は日常的に頻繁に行われる動作ではありません。
それ故に、中学生や高校生の体がまだ出来上がっていなかったりスポーツが盛んな世代、競技を初めたばかりの初心者には負担が大きく、シンスプリントが起こりやすいのです。
動き自体が負担の大きい動きということに加えて、未熟な体、競技に慣れていない体に急激に繰り返し負担が加わることで、痛みを起こしてしまうことが考えられます。
原因
負担がかかりすぎている
シンプルに走ったり跳んだりする距離や量が多いことが原因です。
特に初心者の方は、徐々に負荷を強くしていかないと、体が負担に耐えられません。
筋肉が硬い
普段、あまり使わない筋肉は硬くなっている可能性があります。
例えば、体操選手なんかは最初から体が柔らかいわけではなく、ストレッチや競技の中で徐々に体が柔らかくなっていきます。
それと同じで、走ったり跳んだりする時に使われる筋肉も最初から柔らかいわけではありません。
なので、いきなり本格的な競技や練習に参加していると、まだ競技に適した筋肉の柔らかさはないので、炎症や筋肉の緊張を強めてしまう原因になります。
地面が硬い
競技に適した体作りや徐々に負担をかけていくように配慮していたとしても、硬いグラウンドや路面で練習を繰り返していては体にかかる負担は大きいです。
環境を変えられるのであれば、芝生や陸上競技場のトラックのようにある程度クッション性のある地面で練習することが望ましいでしょう。
環境を変えることが難しければ、クッション性のあるシューズにしたり、シューズのかかとや底がすり減っているのであれば交換したりを検討しましょう。
扁平足
扁平足はいわゆる、足の土踏まずが潰れてなくなっている状態の足を指します。
土踏まずの部分に高さがあることで、走ったり跳んだりする時に足へかかる衝撃を吸収してくれます。
なので、土踏まずがない扁平足の方は足へかかる衝撃が大きく、けがをしやすいと考えられます。
足のアライメント
アライメントとは、関節や骨の並びのことを指します。
人それぞれ姿勢や動作のくせがあったり必ず偏りがあります。
なので、例えば、すねの骨が外側へ少し傾いている、かかとの骨が少し内側へ傾いているなど、アライメントがずれていることがあります。
例で挙げたような、すねが外側に、かかとが内側に傾いたアライメントでは、土踏まずに体重が集中し扁平足になりやすくなります。
すると、足にかかる衝撃を吸収することができず、ダイレクトに足へ衝撃が加わるので、けがをしやすくなってしまいます。
対処法
対処法としては以下のようなものが挙げられます。
- 運動後のアイシング、ストレッチ
- 芝生やトラックのような柔らかい地面に環境を変える
- クッション性の高いシューズに交換する
- 足の指や足首の運動をする
足の指や足首の運動として、具体的には以下の運動をやってみてください。
足の指の運動
足の裏には小さい筋肉がたくさんあります。
それらが適切に働くことで、土踏まずの高さが適切に維持されます。
その筋肉を働かせるためのポイントが、指を分けて使うことと指を付け根から動かすことです。
指の付け根とは、第二関節よりも足首に近い部分で、指と足の甲の間を指します。
ここを意識しながら指の運動をしてみましょう。
- 椅子に腰かける
- 足の裏を地面につけたまま、足の指を反らす
- 指を反らしたまま、親指だけ地面に近づけるように曲げる
- 次は小指だけ地面に近づけるように曲げる
- 薬指、中指、人差し指の順に地面に近づけるように曲げる
足首の運動
足首はかかとの骨が要で、かかとの骨が外側や内側に傾くと、足全体に影響が出ます。
かかとの骨が傾かないようにするには、足首の外側と内側の筋肉をバランス良く働かせる必要があります。
そのために、親指側、小指側にバランス良く体重をかけてかかとを持ち上げることがポイントです。
- かかと同士を合わせ、つま先を30°程度に開いて立つ
- 親指と小指それぞれに体重をかけつつ、かかとを持ち上げる
- 親指と小指それぞれに体重をかけたまま、かかとを降ろす
- 10~20回繰り返す
シンスプリントの症状別対処法④ | 何もしなくても痛いケース
ここでは、何もしなくても痛い場合に考えられること、原因、対処法を解説します。
考えられること
炎症が強い
炎症が軽度であれば、適度に安静やアイシングを行えば炎症は抑えることができ、徐々に軽快していきます。
ですが、炎症が強い場合、中々炎症が治まらず、炎症が慢性化してしまう可能性が考えられます。
その場合、何もしなくても痛みを感じることがあります。
疲労骨折
骨とその周囲は神経と血管が豊富ですので、骨折するとその部分に痛みと腫れが生じます。
参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
骨折による組織の損傷に伴う痛み、炎症による神経を刺激する痛みで何もしなくても痛みを感じる可能性があります。
原因
運動のしすぎ
炎症が強い場合や疲労骨折している場合、運動を続けるのはお勧めできません。
炎症が強いのに運動を続けていると、いつまで経っても炎症は治まりません。
まずは安静とアイシングで様子を見て、整形外科の受診をお勧めします。
痛みや負担が蓄積、慢性化
炎症や疲労骨折は数回の負担で起こるわけではありません。
何度も繰り返し同じ部位に負担が加わることで、組織が傷ついたり骨折することで起こります。
また、繰り返し痛みを起こすような刺激が加わることで、痛みが慢性化してしまうと、組織自体が治っても痛みを感じてしまうこともあります。
対処法
まずは安静が第一です。
何もしていなくても痛いのに運動すると、余計に痛みを強くしてしまう可能性が高いです。
安静にしていても軽快しない場合、整形外科を受診し医師に診断をしてもらいましょう。
まとめ
シンスプリントは、すねの内側に繰り返し負担が加わることで痛みが起こるものです。
腫れを伴うケース、押すと痛みを伴うケース、走る動作やジャンプで痛いケース、何もしなくても痛いケースの4つに分け、それぞれの考えられること、原因、対処法について解説しました。
シンスプリントは慢性化しやすいので、ご自身がどのケースに当てはまるのか症状と照らし合わせ、それに合った対処法を行ってください。