テニスは運動量が多く、関節の動く幅も大きなスポーツです。
そのため、準備運動が不十分だったり、最近始めたばかりの初心者の方の中には、テニスで怪我をしてしまう方も少なくありません。
怪我をしてしまったかもしれないが、どんな怪我なのかよく分からない、どう対処していいのか分からない、こんな悩みがあるかもしれません。
そこで、今回は肩や肘、手首など腕の怪我に焦点を当て、テニスで怪我をする原因や考えられる事、対策を解説します。
テニスで怪我をする原因
テニスで怪我をする原因としては、主に以下の6つが考えられます。
- 肩甲骨周りが硬い
- 肩周りが硬い
- 肘の外側が硬い
- 手首が硬い
- ラケットの持ち方が悪い
- ボールの打ち方が悪い
それぞれ解説していきます。
肩甲骨周りが硬い
腕を動かす時、肩甲骨も腕に合わせて一定の割り合いで動いています。
ですが、肩甲骨が硬いと腕に合わせて動くことができず、一定の割り合いで動くことはできません。
例えば、本来は腕を90度挙げる時、上腕骨が60度、肩甲骨が30度動くとします。
ですが、肩甲骨が硬く10度しか動けないとすると、残りの80度を上腕骨が動かなくてはいけず、それだけ肩に加わる負担が大きくなります。
肩周りが硬い
サーブやスマッシュのような大きく力強い動きには、肩の柔軟性が必要です。
それ以外でもバックハンドやフォアハンドも大きな可動性が求められます。
同じ動きをしたとしても、肩が硬い人では筋肉や腱に強く伸ばされる力が加わり、それが原因で組織を損傷したり炎症を起こすことで、痛みにつながります。
肘の外側が硬い
肘の外側の硬さと言うのは、言い換えると、手首を倒す、指を曲げる、手のひらを下に向ける動きがしにくくなることと言えます。
何故なら、肘の外側に付く筋肉は、手首を反らす、指を反らす、手のひらを上に向ける筋肉だからです。
例えば、何か物をつかんだ時、肘の外側の筋肉が硬く指を曲げにくい状態ですと、筋肉はパンパンに張った状態になります。
その状態というのは、筋肉が限界まで伸ばされたゴムのような状態だと思ってください。
そして、筋肉も伸ばされますが、筋肉が付いている骨の部分も強く引っ張られています。
筋肉が強く伸ばされすぎる、骨が強く引っ張られることで、筋肉の損傷や骨の変形をきたし、痛みにつながります。
手首が硬い
手首以外の関節の影響も大きいですが、手首自体の硬さも問題となりやすいです。
体全体を使って手首に頼ったボールの打ち方をしないようにはしても、手首が全く動かないわけではなく、少なからず手首は動きます。
硬い手首に動きが加わると、柔らかい手首に比べて動かせる範囲が少ないので、少しの動きでも手首にとっては負担となります。
なので、手首が硬いことが手首を痛める原因になります。
ラケットの持ち方が悪い
テニスのラケットの持ち方は複数あり、人それぞれに合った持ち方もあるので一概にこれが正解とは言えません。
ですが、手首を炒めるかどうかという視点から考えると、痛めやすい持ち方はあります。
痛めやすい持ち方で、何度もボールを打つことで手首に負担がかかり痛くなる可能性があります。
また、手首に負担がかかってくると、それをかばうためにフォームが乱れ、肘や肩にも負担がかかる可能性があります。
ボールの打ち方が悪い
手首だけでボールを打つような、いわゆる手打ちをすると手首を痛めやすいです。
本来は、肩や肘、脊柱や股関節など、全身を上手く使ってボールを打つのが理想的なフォームです。
ですが、初心者の方や運動に慣れていない方だと、手首のスナップだけでボールを打ってしまいがちです。
それを繰り返すことで、手首を痛める原因になります。
テニスで怪我をした時に考えられる事
テニスで怪我をした時に考えられる事としては、主に以下の7つが挙げられます。
- TFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷
- 腱鞘炎
- 上腕骨外側上顆炎
- 腱板損傷、腱板断裂
- SLAP損傷
- Bennett病変
- 肩甲上神経障害
それぞれ解説していきます。
TFCC損傷
スポーツや外傷、手首の使いすぎによって、手首の小指側の痛みを感じる代表的なものがTFCC損傷です。
TFCCとは、小指側の手首と腕をつなぐ複数ある靭帯や腱の総称を指します。
手首は大きく動きますが、その反面負担がかかりやすい関節でもあります。
その手首にかかる負担を減らすクッションのような役割をTFCCが担っています。
TFCCが損傷すると、手首にかかる負担を減らせなくなり、骨や腱、靭帯同士でこすれて炎症を起こすので痛みを感じるようになります。
テニスでは、ボールの進行方向への回転をかけるトップスピンやスマッシュを打つ際にTFCCを痛めやすいです。
特にトップスピンをかける時、手首だけで回転をかけるようないわゆる手打ちで打つと、手首が一旦小指側に倒れてから親指側へ動きます。
この時に、TFCCに大きな負担がかかり、その結果、損傷しやすくなるのです。
以下のテストで手首の小指側に痛みが出現する場合、TFCC損傷の可能性が高くなります。
骨や靭帯が原因の痛みを評価するテスト(Ulnocarpal stress test)
- 手首を真っ直ぐに保つ
- そのまま手首を小指側に倒す
- 痛みが出ればTFCC損傷の可能性あり
腱鞘炎
腱鞘炎には主に以下の2種類あります。
- 尺側手根伸筋炎
- ドケルバン病
尺側手根伸筋腱は手首の腱の中でも小指側を通る腱です。
この腱が周りの靭帯や骨とこすれたり炎症を起こすことで痛みを感じることを尺側手根伸筋腱炎と呼びます。
一方、ドケルバン病は手首の親指側にある腱鞘とそこを通過する腱に炎症が起こった状態で、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の親指側が痛み、腫れます。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
腱鞘とは、腱の通り道になるトンネルのような部分で、ここで靭帯や骨とすれたり炎症を起こすことで痛みを感じることをドケルバン病と呼びます。
原因としては、ドアノブを回すような手首の動きで、不慣れな作業、手を酷使する作業などが問題となります。
テニスでは、トップスピンやスライスのように回転をかける動き痛くなりやすいです。
この時、手首には親指側、小指側と横方向への動きが加わりやすいので、腱鞘炎を起こしやすくなります。
以下のテストでそれぞれ小指側に痛みがある場合は尺側手根伸筋腱炎、親指側に痛みがある場合はドケルバン病の可能性があります。
小指側の腱鞘炎を評価するテスト(合掌回外テスト)
- 胸の前で手のひらを合わせて合掌する
- 合掌したまま、指を下に向けるように手首を動かす
- この時に痛みが出れば尺側手根伸筋腱炎の可能性あり
親指側の腱鞘炎を評価するテスト(Eichhoff test)
- 親指を人差し指から小指で握り込む
- 握り込んだまま小指側へ手首を倒す
- この時に痛みが出ればドケルバン病の可能性あり
上腕骨外側上顆炎
肘の外側の痛みが主症状で、テニス肘と呼ばれています。
何故肘の外側が痛くなるのかと言うと、肘の外側に付着する筋肉の使い過ぎ、骨の変形や筋肉の損傷、あるいは、それらによって起こる炎症が痛みの原因です。
肘の外側には、手首を反らす、指を反らす、手のひらを上に向ける筋肉が付いています。
例えば、手のひらを下に向けて何か物をつかむ時、力を入れないと手首が下に倒れたり、つかんだペットボトルを離してしまいます。
この時、手首を水平に保ったり、ペットボトルをつかんだ状態を保ってくれるのが、肘の外側に付いている筋肉です。
そのため、テニス肘になると、物を持ち上げるような動きで肘の外側を痛めてしまうことがあります。
以下のテストで肘の外側に痛みが出る場合は、上腕骨外側上顆炎の可能性があります。
上腕骨外側上顆炎を評価するテスト(Chairテスト)
- 肘を伸ばし、手のひらを下へ向ける
- 4kg程度の椅子を指でつかんで持ち上げる
- この時、肘の外側に痛みが出る場合は上腕骨外側上顆炎の可能性あり
腱板損傷、腱板断裂
腱板とは、肩の周りを取り囲むように位置する4つのインナーマッスルのことを指します。
腱板の中のどれかが損傷、あるいは断裂することを腱板損傷や腱板断裂と呼びます。
原因としては、サーブやスマッシュなど腕を高く挙げた位置での動きを繰り返す中で、腱板と上腕骨頭や関節窩が何度も衝突し、次第に腱板が損傷してしまうことが考えられます。
肩の運動障害・運動痛・夜間痛を訴えますが、夜間痛で睡眠がとれないことが受診する一番の理由です。
運動痛はありますが、多くの患者さんは肩の挙上は可能です。
■参照元:公益社団法人 日本整形外科学会
このように、夜の痛みと肩の運動時の痛みが主な特徴です。
以下のテストで肩に痛みがある、あるいは腕を保てない場合、腱板損傷や断裂の可能性があります。
腱板損傷・断裂を評価するテスト(Drop arm test)
- 椅子に腰かける、あるいは立つ
- 腕を体の真横から肩の高さまで持ち上げる
- その位置で腕を保持する
- 肩の高さで保持できない、あるいは痛みが出る場合、腱板損傷・断裂の可能性あり
SLAP損傷
肩関節は上腕骨頭と呼ばれる球状の骨と肩甲骨の関節窩と呼ばれるゴルフボールを置くボールティーのようなもので構成されています。
関節とは言っても、上腕骨頭に対して関節窩がかなり小さく不安定なので、それを補うために関節窩の周りには関節唇と呼ばれる軟骨があります。
この関節唇の上部がSLAPと呼ばれ、腕を挙げたり降ろしたりの繰り返しでこの部分に負担が掛かり、傷ついたり裂けてしまことにより起こる障害のことをSLAP損傷(上方関節唇損傷)といいます。
Bennett病変
サーブやスマッシュなど腕を高く挙げた位置での動かし過ぎなどによって、肩甲骨の一部に骨棘と呼ばれる変形が生じることを指します。
これは上腕三頭筋と呼ばれる肘を伸ばす筋肉が肩甲骨に付着している部分に起こりやすいです。
サーブなどで腕を持ち上げると、上腕三頭筋が伸ばされるので、繰り返し伸ばされることで骨に負担がかかった結果がベネット病変です。
腕を高く挙げた時の肩後方の痛みや肘の曲げ伸ばしで痛みが出現することが特徴です。
肩甲上神経障害
肩甲上神経は、肩甲骨の後ろ側に付着する棘下筋と言う筋肉の動きを支配している神経です。
この神経が骨と筋肉の間でこすれて炎症を起こしたり、圧迫されて血流が悪くなることを肩甲上神経障害と呼びます。
肩甲上神経は肩甲骨の外側にある棘下切痕と呼ばれるトンネルをくぐって肩甲骨の外側へ向かって伸びています。
サーブやスマッシュのように腕を大きく振り上げる際、肩甲骨は大きく外側へ動き、棘下切痕に下から突き上げられる形で神経が伸ばされます。
そういった動きを繰り返す、神経がこすれたて炎症を起こしたり圧迫されるため、肩甲上神経が支配する棘上筋、棘下筋の動きを弱くします。
棘上筋と棘下筋は肩を安定させる重要な筋肉なので、これらが上手く働かないと、肩は不安定になり、肩を動かす時に腱や骨を傷つけるため、痛みを起こす場合があります。
テニスで怪我をした時の対策
ここまでを踏まえて、テニスで怪我をした時、あるいは今後怪我をしないような予防的な観点からどういった対策をしたら良いのかというと、以下の5つです。
- アイシング
- サポーターをつける
- ラケットの持ち方を変える
- ボールの打ち方を修正する
- ストレッチ
それぞれ解説していきます。
アイシング
痛みがある場合、炎症が起きている可能性が高いので、炎症を抑える目的でアイシングは有効です。
ビニール袋に氷を入れ、患部を10〜20分冷やすと感覚がなくなってきますので、その時点で冷やすのをやめて大丈夫です。
サポーターをつける
手首の痛みに関しては、手首の横方向への動きがなるべく出ないようにしたいので、手首の周りが覆われるようなサポーターであれば大丈夫です。
腱鞘炎に関しては、親指が内側になるべく入らないようにしたいので、親指の付け根と手首の周りが覆われるようなサポーターが適しています。
テニス肘のような肘の痛みには、エルボーバンドと呼ばれる前腕に巻くようなサポーターがあります。
間違えやすいのが、肘の外側の骨が出っ張った痛い部分につけてしまいやすいですが、骨の出っ張りから指2本分手首側にいった辺りにつけるようにしましょう。
肩の痛みに関しても、肩を覆い、反対側の脇腹辺りに引っ掛けるようなタイプのサポーターがあるので、それを装着するのも効果的でしょう。
ラケットの持ち方を変える
トップスピンをかける時に手首を痛めやすいと言いましたが、回転をかけやすいのはウェスタングリップやセミウェスタングリップという持ち方です。
これはラケットを握った時にラケット面が地面を向くような持ち方で、下から上へ回転をかけやすいラケットの持ち方です。
ですが、コンチネンタルグリップやイースタングリップと呼ばれる握り方はラケット面が地面に対して垂直なので、ウェスタングリップに比べて回転はかけにくいという特徴があります。
なので、この持ち方でトップスピンをかけようとすると、手首を使って回転をかけてしまいやすく、その結果手首を痛めてしまいやすいのです。
つまり、スピンをかけるならラケットを握った時にラケット面が下を向くように持つウェスタングリップで持つのが負担は少ないということになります。
ボールの打ち方を修正する
手打ちは手首を痛めやすく、それをかばって他の部位にも負担がかかると解説しました。
では、どうやって打てば良いかと言うと、手首から肘の間の前腕と呼ばれる部分を使ってスピンをかけます。
具体的にはドアノブを回すような動きで、肘を支点に手のひらを上へ向けたり下へ向けたりするので、手首はひねらずにスピンをかけることができるため、手首にかかる負担は減らすことができます。
また、それでも肘や肩に負担となる場合もあるので、足の力を使って、股関節と胸をひねるように意識して全身を使って打つのが良いでしょう。
ストレッチ
テニスは関節をひねる動きが多く、運動量も多いスポーツなので、体が硬いとそれだけで怪我をするリスクが高くなります。
なので、テニスをするのなら、日頃からストレッチをするように心がけ、体を柔らかくしておくと怪我をする可能性はグッと減ります。
以下におすすめのストレッチを
肩のストレッチ
- 四つ這いになる
- 片方の手を反対の手と膝の間に入れる
- 肩が床につくくらいまで伸ばし、体は反対側へひねる
- 10〜20秒キープする
ポイントは、腰は少し丸くなっているくらいで良いので、反らないように注意し、胸から体をひねって腕を伸ばすようにしましょう。
肘・手首のストレッチ
- 片方の肘を伸ばし、手のひらを上に向ける
- 反対の手で手首を反らす
- 10〜20秒キープする
- 次に、肘を伸ばしたまま手のひらを下に向ける
- 反対側の手で手首を曲げる
- 10〜20秒キープする
ポイントは、肩がすくまないことと肘は曲げずに伸ばせるところまで伸ばして行うことです。
背骨のストレッチ
- 横向きに寝る
- 下側の足は伸ばし、上側の足は曲げる
- 後ろを振り向くように体をひねる
- ひねったまま10〜20秒ストレッチする
ポイントは、しっかりと足を卍の形にしておくことで、これによって腰でひねらず胸で体をひねることができます。
理学ボディのおすすめ
今回紹介した対策を実践しても中々肩や肘、手首の痛みがなくならないという方は、理学ボディで施術を受けることがおすすめです。
理学ボディでは、最短で痛みを改善させることにこだわっており、筋膜という組織に対して施術を行います。
筋膜は筋肉を覆っている膜状の組織で、筋膜が硬くなると筋肉の柔軟性が低下、筋力が発揮しにくいなどが起こります。
筋膜の硬さのある場所はピンポイントで存在しているため、ストレッチやマッサージでは中々ほぐすことができません。
もし、筋膜の硬さが肩や肘、手首の痛みに影響しているのなら、ストレッチやマッサージをしていても中々改善することは難しいでしょう。
ですが、筋膜の施術に精通している理学ボディのセラピストなら、ピンポイントの硬さでも見つけることができます。
もし、肩や肘、手首の痛みがなくならなくて困っているという方は、ぜひ理学ボディにお越しいただき、筋膜の施術を受けてみてください。
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