手首の痛みや腫れがみられたとき「あれ?腱鞘炎かな?」と思う方は多いです。
しかし、腱鞘炎の中でも特に親指側が痛い場合は、『ドケルバン病』である可能性があります。
本記事では、『手首の親指側の痛みや腫れの原因』をしっかりと見極め、正しい対処法が分かる構成になっています。
治療院に行くにしても、きちんと本記事で原因を把握した上で治療を受けると最短で治すことができます。
手首の親指側が痛い2つの原因

手首の親指側の痛みの原因の多くは、一般でもよく知られている腱鞘炎です。
腱鞘炎の中でも、「どこに」炎症が起こっているかによって疾患名が変わります。
その中で、手首の親指側に腫れや痛みが伴うものは、『ドケルバン病』と言われています。
腱鞘炎
手首の痛みや腫れの原因で多いのが、手首の使い過ぎが原因で起こる腱鞘炎です。
痛みのメカニズム
手には5本の指それぞれに
- 手の平側には曲げるときに働く腱:屈筋腱
- 手の後ろ側には伸ばすときに働く腱:伸筋腱
があります。
腱は手指に向かう途中で腱鞘というトンネルの中を通ります。
日常生活やスポーツ、仕事で手を使い過ぎると、腱が傷ついたり、腱鞘との間で摩擦が起き腫れや痛みを引き起こします。
痛みの原因
基本的には使い過ぎが原因なので、安静にしていれば腫れや痛みは落ち着きます。
そのまま、使い続けてしまうと腫れや痛みが引かず、腱鞘炎につながってしまいます。
どの指の腱にも起こりますが、一番多いのが親指、次が中指や薬指と言われいます。
- 手の平側に症状が起こるのを「バネ指」
- 親指の付け根に症状が起こるのを「ドケルバン病」
と分類されます。
重症となると、痛みが強くなり自分で動かすことさえも困難となってしまいます。
ドケルバン病
手首の特に親指側に痛みや腫れが生じる場合に多い疾患で、
- 親指を広げたり、動かそうとすると痛む
- 手首の親指側が腫れる
- 親指に力が入りにくくなる
といった特徴的な症状が見られる場合に疑います。
痛みのメカニズム
親指を伸ばしたり広げたりする筋肉の2本の腱(短母指伸筋腱・長母指外転筋腱)や、その2本の腱を覆うトンネル(腱鞘(けんしょう)が炎症を起こしている状態です。

痛みの原因
親指の使い過ぎ(スマホ・パソコン作業・職業病など)
- 親指を動かす2つの筋肉の腱が傷ついたり、炎症を起こす
- トンネルである腱鞘が肥厚(厚くなってしまう)と通り道が狭くなり炎症を引き起こす
従来は美容師さんやピアニストなど指先を多く使う仕事をする人に多くみられていました。
しかし、近年ではスマホの操作によって引き起こされる若者が多くみられるようになってきています。
- 女性に多い疾患で女性ホルモンとの関連性が高い
- 妊娠・出産期に多く分泌される「プロゲステロン」がトンネル(腱鞘)を収縮させ狭くする
- 更年期に減少する「エストロゲン」のが腱や関節の柔軟性を低下させる
女性に多いこの疾患は、妊娠・出産期や更年期に訪れる女性ホルモンの影響を受けることもしられています。
他にも赤ちゃんを抱く際に頭を支えるのに親指を使うことや、家事で手首や指を駆使することも女性に多く発症する原因となります。
ドケルバン病のセルフチェックをしてみよう
ドケルバン病かどうかを診る簡単なテスト法を紹介します。
手首の親指側が痛む場合は是非、試してみましょう。
- 検査する方の親指を内側に倒す
- 反対の手で、親指を掴み、小指の方へ引っ張る
⇨痛みが強くなる場合は『ドケルバン病』の可能性あり

- 検査する方の親指を握り、握りこぶし(グー)をつくる
- その形のまま手首を小指側に倒す
- 痛みが出るか確認
⇨痛みが強くなる場合は『ドケルバン病』の可能性あり
手首の親指側が痛いときの対処法

安静(保存的治療)
使い過ぎが原因となるので、痛みや腫れが強い時は安静が第一優先です。
場合によっては手首を固定したり、湿布などの消炎鎮痛剤を使うこともあります。
症状が軽い場合はほとんどこれで改善してしまいます。
炎症が強い場合はステロイド注射
安静にしても、痛みや炎症がなかなか引かない場合や、生活や仕事に支障が出てしまう場合は、ステロイド注射をして炎症を抑えることもあります。
改善までの期間には個人差はありますが、おおよそ注射から2~3週間以内に症状が改善することが多いです。
また、注射の持続期間としては3か月~長くて半年ほどで、軽症の場合はほとんどがステイロイド注射と安静で症状が改善します。
しかし、ステロイド注射の後に再発をしてしまう方も中にはいます。
何度もステロイド注射を繰り返すと、徐々にその効果は薄れてしまうことが多いです。
また、徐々に腱の周りにステロイドが蓄積し、腱が脆くなって切れてしまうこともあるので注意が必要です。
また、一度ステロイド注射を打つと一定期間、間隔を空ける必要もあります。
その他にも、糖尿病などの基礎疾患を抱える方の中にはステロイド注射が打てない場合もあるので医師と相談が必要です。
何らかの理由でステロイド注射での治療が困難な場合は、手術での治療が選択されます。
手術
上記の2つでも症状が改善せず、手に力が入らなくなってしまう場合や、何度も再発を繰り返してしまう場合には手術が適応となります。
手術では厚くなってしまった腱鞘(トンネル)を切り開き、腱の通りが良くなるようにします。
手術自体はおおよそ30分程度で行えるので日帰り入院でも可能な場合が多いです。
状態によって少し差がでますが、手術した部分が順調に改善してくると、術後3〜4日で家事などの手を使う動作が少しずつ可能になります。
※術部を濡らさないように、ゴム手袋などで保護するなどの工夫は必要です。
術後2週間程度で、痛みが引くことが多く、徐々に普通の生活に戻ることができます。
手首の親指側を痛めないための効果的な再発予防法

親指の負担を減らす マッサージ法
パソコンのマウス操作や、スマホの操作などで親指を使い続けると、親指の筋肉は過緊張状態となってしまいます。
痛みや腫れなどの炎症につながる前に、やさしくマッサージをしながら血流の改善や筋肉の過度な緊張ほぐしておきましょう。
- 痛みの強い部分は避け、親指の付け根を反対の指の腹で優しく揉みほぐします。
- 手を使う仕事(パソコン作業など)の前後に行うと効果的です。
※1〜2分程度を目安に行いましょう
手首を柔軟に保つためのストレッチ
手の指と手首は常に連動して動きます。
手先に疲れやだるさを感じるときは、同じように手首にも疲れが溜まっていることが多くあります。
これは、手の指や手首を反らせる筋肉が肘の下から手の甲側、曲げる筋肉は手の平側を通ってそれぞれ指先へ向かう構造に関係しています。
どちらの筋肉も日頃からストレッチを行い、手首〜指先を柔軟に保つことが痛みの軽減につながります。
パソコン作業や家事などの前後や合間に座ったままでも行えるストレッチを紹介します。
ぜひ、毎日の習慣にしてみましょう。
- 手を前に伸ばし、手のひらを上に向ける
- 反対の手で親指以外の4本の指を床の方へ向けるようにゆっくりと伸ばす
※30〜60秒を目安に行いましょう
- 手を前に伸ばし、手のひらを下に向ける
- 反対の手で親指以外の4本の指を天井の方へ向けるようにゆっくりと伸ばす
※30〜60秒を目安に行いましょう
まとめ
手首の親指側の痛みは、腱鞘炎の中でもドケルバン病である可能性が高いです。
今回お伝えしたセルフチェック法で確認し、痛みが増す場合は早めに受診しましょう。
また、日頃から手首に負担が掛からないように、日常的にストレッチやマッサージで痛みを予防していくことも大切です。