【現場で使える】股関節インピンジメント(FAI)のリハビリテーションの進め方
股関節のインピンジメント?初めて聞いた・・・ 肩のインピンジメントの間違いじゃなくて? 新米理学療法士A
股関節の痛みに関して近年注目されている、股関節インピンジメント(FAI)
特にFAIと略されることが多いですね。
FAIとは、femoroacetabular impingement(大腿骨と寛骨臼のインピンジメント)のことなんですね。
私も、初めてこの診断名のついた患者さんを対応した時、わからないことが多くありました。
それでも調べていくうちに、タイプ分けがあって、それぞれ発生機序が違うこと
また、リハビリでは、どのようなことを評価して、何にアプローチしていけば良いのかわかってきました。
今回は、保存療法における、評価〜治療介入について、お伝えしたいと思います。
股関節インピンジメント(FAI)について
股関節インピンジメント(FAI)とは、股関節の運動時に寛骨臼辺縁部と大腿骨頚部ないし骨頭頚部移行部付近が、繰り返しインピンジメント(衝突)することにより、寛骨臼縁の関節唇および関節軟骨に損傷が惹起される病態です。
股関節インピンジメント(FAI)の分類
股関節インピンジメント(FAI)には、cam type(カムタイプ)、pincer type(ピンサータイプ)、その両方のcombined type(コンバインドタイプ)があります。
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出典 : 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション(下肢)改訂第2版 [ 整形外科リハビリテーション学会 ] 林典夫 (2008) pp30 図1
股関節インピンジメント(FAI)の発生機序
・cam type(カムタイプ)
cam type(カムタイプ)では、骨頭・頚部移行部に生じた骨性隆起が、股関節運動に伴い、寛骨臼縁部との間に、インピンジメントをきたし、関節唇や関節軟骨の損傷を惹起します。
・pincer type(ピンサータイプ)
pincer type(ピンサータイプ)では、寛骨臼の過形成により、寛骨臼が大腿骨を過剰に被覆しているため、股関節運動時に寛骨臼辺縁と、大腿骨頭頚部が衝突し、関節唇損傷きたし、反対側では、亜脱臼に伴う、応力集中をきたします。
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出典:関節外科 2017年 Vol.36 No2(2017) pp10 図1
股関節インピンジメントの現場での所見
では自覚症状や検査など、どのように評価していくのが良いでしょうか?
股関節インピンジメントのある方の自覚症状は?
- 痛み:運動時の痛みのみでなく、日常生活(ADL)での痛みが主訴
- 痛む場所:鼠径部~大転子(Cサイン)
- 歩行時痛(10~15分)の痛み
- 座位からの立ち上がりでの痛み
- 片脚起立での痛み
特にCサインが特徴的ですね!
出典:sportsmedicine 2014年 No.157 pp19 図11
ハヤシ
股関節インピンジメントを確認するための検査は?
FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)であるかの評価としては、以下の検査があります。
- Anterior Impingement Test
- FABER Test
- Pelvic Mobility Test
- Posterior Lumber Flexibility Test
- Active SLR Test
- などがあります。
今回は、Anterior Impingement Testの陰性化について、詳しく説明していきます。
ハヤシ
Anterior Impingement Test(アンテリオル・インピンジメント・テスト)
FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)では、他動的な股関節屈曲100°での内転・内旋で疼痛が出現します。
この時、被験者は痛み以外に「つまる感じがする」ということが多いです。
もちろん、左右差の確認は必要です。
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出典:sportsmedicine 2014年 No.157 pp19 図10
股関節の可動域獲得
股関節は寛骨と大腿骨で構成されています。
大腿骨には頸体角があるため、通常の股関節屈曲運動と大腿骨頸部軸屈曲運動では、骨の位置関係や軟部組織の緊張が異なります。
通常の股関節屈曲運動では寛骨臼辺縁部と大腿骨頸部がインピンジメント(衝突)しやすいです。
一方、大腿骨頸部軸屈曲運動では、見かけ上、股関節屈曲・外転・外旋を伴った屈曲となり、インピンジメント(衝突)を回避できます。
そのため、前後の軟部組織の緊張は均一となり、可動域を獲得することができます。
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出典 : 関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション(下肢)改訂第2版 [ 整形外科リハビリテーション学会 ] 林典夫 (2008) pp31 図5
そのほか、拘縮しやすい梨状筋や中殿筋のストレッチングを行ったり、後方の関節包のストレッチングを行い、可動域を獲得していきましょう。
ハヤシ
Pelvic Mobility Test(PMテスト)
この検査は、仙腸関節を中心とした、骨盤帯の可動性を確認するテストです。
股関節の屈曲に伴う、上前腸骨棘(ASIS)と腸骨稜最頂部を結んだ線の傾きの変化を評価します。
健側と患側を比較し、可動性が低下している場合を陽性とします。
陰性:股関節の屈曲に伴い、寛骨の後方回旋がみられる
陽性:股関節を屈曲させても、寛骨の後方回旋がほとんどみられない
出典:関節外科 2017年 Vol.36 No2(2017) pp72 図4
Posterior Lumber Flexibility Test(PLFテスト)
この検査は、腰椎の後弯の可動性を確認するテストです。
開始肢位は、側臥位で股関節45°屈曲位で、そこから上方下肢を内転・外転中間位で屈曲させて、ROMを測定します。
骨盤ー腰椎の可動性が保たれていれば、PLFテストと仰臥位での股関節屈曲ROMテストを比較した時に、PFLテストの可動域の方が大きくなります。
骨盤ー腰椎の可動性が保たれていない場合は、PLFテストと仰臥位での股関節屈曲ROMテストで同等の可動域となります。
つまり、腰椎がうまく後弯できていないということになります。
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出典:関節外科 2017年 Vol.36 No2(2017) pp72 図5
テストの解釈
PMテストとPLFテストの解釈としては、両テストとも骨盤の後傾可動域を評価する方法です。
PMテストでは、腹横筋の機能を評価しています。
PLFテストでは、腰背部の筋のスパズムを評価しています。
PMテストとPLFテスト陰性化
両テストの陰性化にむけて腹横筋の活性化が重要です。
その理由としては、腹横筋の機能が低下すると、胸腰筋膜の緊張も共に低下してしまします。
それにより、代償的に広背筋、腰方形筋、脊柱起立筋などのアウターマッスルが、過活動を生じると考えられています。
これらの腰背部の筋の過活動は、骨盤後傾の運動を阻害するため、腹横筋の活動を高めるエクササイズが必要ですね!
股関節インピンジメントの方にオススメの骨盤後傾・腰椎後弯を促すリハビリ
裸足で、壁に足底を接地させて、膝関節が屈曲90°となるように図のようなポジションになります。
この状態で、踵に感覚を感じながら、骨盤を後傾させていきます。
コツとしては、あまり骨盤を浮かさないことがポイントですね!
腰部が浮いてしまうと、腰背部の筋が緊張してしまいますので!
ハヤシ
このポジションで呼吸を行います。
ポイントは呼気です!
しっかり息を吐いてもらいましょう
息を吐くことで、腹横筋の活性化が得られます。
ハヤシ
回数は3~5呼吸で行います。
まとめ
今回は股関節インピンジメント(FAI)について、Anterior Impingement Testの陰性化について、保存療法ではどのように順序立ててアプローチしていけば良いかをお伝えしました。
- Anterior Impingement Testで陽性の場合は、まずは可動域を獲得し陰性化するか確認する
- それでも陰性化しない場合は、骨盤を後傾や腰椎の後弯が行えているか確認する
- 骨盤の可動性の低下がみられた場合、骨盤後傾・腰椎後弯できるように腹横筋のエクササイズを行う
ただし注意事項があります。
骨盤の可動性があるにも関わらず、Anterior Impingement Testで陽性の場合は、関節唇損傷を疑い、医師に相談し治療方針を再度考えることが必要です!
保存療法の目安は、約2ヶ月と言われています。
それでもAnterior Impingement Testで陽性であれば、手術も検討するべきですね
ハヤシ
エクササイズを適切に行うには、必ずレッドフラッグを確認しておく必要がありますね!
今後もエクササイズを織り交ぜた投稿をしていきたいと思います。
皆さんの臨床のお役に立てれば幸いです。